2019年07月12日 1583号

【MDS集会 基調講演(要旨)/基本的人権破壊、反民主主義の安倍政権/年金、保育、教育、医療と引き換えの大軍拡/参院選で社会変革の展望掲げ/民主主義勢力の勝利かちとる】

 6月30日、MDS(民主主義的社会主義運動)集会が東京、大阪で開催された。テーマは「民主主義的社会主義の展望のもと参院選を闘いぬき改憲を阻止しよう!」。東京ではMDS山川よしやす書記長が、大阪ではMDS佐藤和義委員長が、基調講演に立った。要旨を紹介する(4・5面に関連記事)。

安倍の本質表れた年金問題

 6月3日、金融庁が公表した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」は、老後資金が年金だけでは足りず、30年間で2千万円が必要とした。必要とされる介護費用1千万円を加えると3千万円になる【図1】。







 この報告書に安倍政権の社会保障切り捨て公的保障でなく「自助」でという方針が明確に示されている。多くの高齢者世帯に不可能な資産形成を要求し、自助で生きろと見捨てるのが安倍政権だ。《3面に関連記事》

 社会保障削減の理由は、第1に社会保障費削減により、軍事費、大規模開発というグローバル資本のための財源を確保することだ。第2に公的保障削減より、民間保険や投資への需要を作り出すことだ。第3に年金を削減し受給開始年齢を遅らせることで高齢者を安価な労働力として使うことだ。

 このような方針の根底にあるのは新自由主義=基本的人権の破壊、反民主主義だ。

軍事、富裕層を最優先

 新自由主義の下でグローバル資本は高利潤を上げ続け、内部留保も増大を続けている。この膨れ上がった資本にさらに利益を与えるために安倍政権は動いている。

 無権利の非正規労働者を増やし続け、低賃金を資本に保障する。低賃金労動力が不足すれば、直ちに外国人労働力を増やす。低賃金で消費低迷が続けば、今度は確実な市場を民営化、規制緩和で資本に提供する(医療、介護、教育、水道)。オリンピック、万博、リニアなどの大規模開発で市場を提供する。

 資本、資産家に利益を保障するために法人税減税、所得税減税を行う。一般市民に対しては消費税増税、保険料アップで負担を増やす。

 グローバル資本が世界市場で利益をあげ続けるために軍事力を強化する。負担増や社会保障カットに苦しむ市民を沈黙させるため、秘密保護法や共謀罪法など戦争国家づくりを進める。

 この結果が格差拡大であり、市民生活破壊だ。

 安倍政権の政策は徹頭徹尾、反民主主義、反基本的人権だ。1%が富み、99%が苦しむ政策だ。

 安倍政権は「教育無償化」とか「待機児童ゼロ」など一見市民の要求に応えているかのように宣伝するが、教育完全無償化には程遠い。保育所の整備にしても保育内容を無視し、保育士もろくに配置しない低水準の保育園を作ることでしかない。乳幼児の基本的人権を尊重し、保育内容を豊かにするのではなく、低賃金女性労働力を動員し、かつ将来の労働力を得るための手段としているに過ぎない。

改憲は戦争政策総仕上げ

 安倍政権はグローバル資本の世界支配のために、戦争改憲路線を推進してきた。秘密保護法、集団的自衛権行使容認閣議決定、戦争法、共謀罪法と矢継ぎ早に戦争国家体制づくりを進めてきた。その総仕上げとして9条改憲を狙っている。「いずも」の攻撃空母化とF35B購入、イージスアショアなど莫大な軍事費を費やすことで、世界中どこでも展開できる軍事力を持つのだ。

 それが何をもたらすか。最近のイランの事態が示している。

 ホルムズ海峡付近でのタンカー攻撃を受けて改憲戦争論者たちは自衛隊派遣を検討している。海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は「ホルムズ海峡を通過する一般の貨物船・タンカーが安全に航行できることが国際社会として重要」とし、海上自衛隊派遣は「政府の決定に基づき行動する」と述べた。自民党の防衛相経験者の一人は「やはり安保法は必要だった。政府が『存立危機事態』にあたると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能となる」(6/15東京新聞)と語る。彼らは、現時点では派遣しないが、政府の決定さえあればいつでもホルムズ海峡に派兵すると言っているのだ。

 トランプ政権も日本の軍事力行使を要求する。ポンペオ米国務長官は、ホルムズ海峡の航行の自由に依存し経済的利益を得ている国として中国、韓国、インドネシア、日本の国名を繰り返し挙げ「自国の経済に与える真の脅威を理解すべきだ」と発言した。

 グローバル資本主義の担い手たちは軍事力行使の機会をひたすら窺(うかが)っている。

 戦争法の下、日本はいつでも戦争できる状態にある。絶対に戦争をさせてはならない。そのために、必要なのは民主主義の徹底だ。

民主的社会変革打ち出す

 戦争と貧困の安倍政策が市民に本来支持されるわけがない。世論調査では「安倍に期待するか」との問いに対し「期待しない」方が多い。しかし安倍政権は続いている。

 たしかに選挙制度、メディア支配であきらめが市民の間にある。中でも、出口調査などから若者の間に自民党支持が強いといわれている。だがこれは誤りだ。年齢別投票率をみれば明らかに20代が一番低く、内閣支持率も有権者全体の支持率より低い【図2】。出口調査の対象は投票した人であり、若者全体ではない。安倍不支持だが棄権する若者を民主主義の側に獲得し、投票行動につなげねばならない。



 その若者の政治意識については「共産党は自民党に次いで保守的であり、維新が最も革新的であるとみなしている」という調査がある。左派が憲法を守れというとき、若者には「現状肯定」と映る可能性がある。非正規雇用で低賃金で働き、正社員でも長時間労働に拘束されている若者にとって、現状が変わることが大切なのだ。維新は大阪で「変える」ことを打ち出し圧勝したが、「どう変えるのか」を具体的に検討すれば維新の政策は市民生活を悪化させるものだ。現状に苦しむ市民にとってみれば「とにかく変わればいい」ということになりかねない。「現状」は憲法実質否定の安倍政権が生み出しているものであり、改憲阻止こそが現状変革のスローガンであることを徹底して広めなければならない。

 必要なのは、青年層を含め民主主義的変革の方向を大胆に示すことだ。自・公、維新が基本的人権を破壊しグローバル資本の利益のために改憲路線を進む今、我々は社会の根底的変革=民主主義的社会主義を展望して闘う。

 アメリカでDSA(Democratic Socialists of America=アメリカ民主主義的社会主義者)やバーニー・サンダース上院議員が、イギリスで労働党ジェレミー・コービンたちが、そして沖縄でオール沖縄が、韓国ではろうそく革命を実現しソソンリ、済州(チェジュ)島民衆が進める闘いこそ、変革の展望だ。

社会変革の展望を切り開く

 グローバル資本の改憲・戦争路線と原理的に対決することを進めなければならない。平和、基本的人権、平等、民主主義―民主主義的社会主義が、グローバル資本主義のもたらす惨禍への解決策だ。

 バーニー・サンダースは「公立大学などの学費を無償にし、学生ローンの返済をなくすことで、収入に関係なくあらゆる国民が教育を受け、まともな賃金が支払われる仕事に就くことができる」として、学費無償化、学生ローン返済免除を大統領選政策として打ち出した。その財源として株取引に0・5%、債券取引に0・1%課税し10年間で2兆ドル超(約216兆円)を捻出する。公的医療保険設立を目指すメディケア・フォー・オールと合わせれば、まさに1%のグローバル資本の負担で99%の市民生活を豊かにする政策だ。グローバル資本と根本的に対決し、民主主義的社会主義に進む政策だ。これに学び日本でも闘わなければならない。

 すでに野党共闘は、参院一人区ですべて成立した。その政策は【表1】のとおりだ。原発ゼロを初めて掲げるなど前進点はある。しかし、グローバル資本主義を規制し、民主主義的社会主義への変革をめざす立場からするならば不徹底な政策だ。グローバル資本、資本家・富裕層への徹底した課税強化、消費税廃止を明確にし、▽教育費完全無償化▽年金・介護の保障▽非正規労働の撤廃・正社員化▽同一価値労働同一賃金の徹底、あらゆる民営化に反対しJR・郵便の再国有化をめざすことが必要だ。



 MDSは参院選では社民党比例区の大椿ゆうこ・仲村みお予定候補、選挙区共闘候補、共産党候補を支持し闘う。

 参院選で民主主義勢力の勝利を勝ち取り、安倍打倒、改憲阻止をかちとろう。
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