2019年07月12日 1583号

【参院選勝利で政治を変える (4)雇用・賃金 人間の尊厳守る働き方こそ/最低賃金一律1500円、派遣法撤廃へ】

 最低賃金について、自民党は6月2日に発表した公約でこう述べる。「地域経済や中小企業・小規模事業者の実情、地域間格差に配慮しつつ、全国加重平均が1000円になることを目指す」。22日安倍内閣の閣議決定「骨太の方針2019」も「地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す」とした。

 どちらも、200円以上の開きがある地域格差(東京985円に対し、鹿児島761円、青森・沖縄など762円)をそのままにした平均で、しかも1000円も具体的な引き上げ幅や時期目標設定を見送っている。政府・自民党内に最低賃金引き上げ反対勢力が存在するからだ。

 たとえ時給1000円が実現しても、年間通じ週40時間働いたとして年間賃金は200万円にしかならない。

生活費用に地域差なし

 中澤秀一静岡県立大短大部准教授が全国の労働組合の協力を得て15〜17年に実施した最低生計費調査で、「ふつうの暮らし」を実現する費用に地域ごとの差はそれほどないことが明らかになっている。

 同調査は、健康で文化的な生活を営むために必要な生活用品やサービスの量を、穀類A`、肉類Bc、シャツC着…と個々に積み上げて生計費を算出したもの。それによると、「ふつうの暮らし」「あたりまえの生活」に必要な費用(25歳男性、賃貸居住で試算)は税・保険料込みで月額約22万〜24万円。全国どこでも大きな差はなかった。

 これを月の労働時間で割れば必要な時給が計算できる。週40時間労働で月1〜2日の休暇を取れば、月間の労働時間はおおよそ150時間。大都市・地方都市とも時給1500円以上必要となる。

 この点について「市民連合」と野党4党1会派が合意した共通政策は「地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金『1500円』を目指し、8時間働けば暮らせる働くルールを実現し、生活を底上げする経済、社会保障政策を確立し、貧困・格差を解消すること」とした。1500円が共通要求となった意義は大きい。

口だけの氷河期世代支援

 「骨太の方針」は、30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」向けの3年間集中プログラムを打ち出した。

 あきれたことに、安倍政権は提言で「就職氷河期世代」を「人生再設計第一世代」と言い換えることを提唱した。このネーミングには「バカにするのもほどがある」とネット上でも反発が噴出した。

 しかも、肝心の「対策の柱」は、人材不足の運輸や建設、農業などの業界団体等に委託するかたちで資格習得などを行う訓練コースを創設するというもの。また、「人手不足業種との職場見学会付き面接会の開催」などで正社員就職を促進するとし、職業訓練やキャリア教育を人材派遣会社などに委託する。「対策の柱」からして、外国人労働者の受け入れ拡大と同様、人材不足が叫ばれる業界を何とかしようという意図しかない。

 「就職氷河期世代」をここまで不安定な就労状況に追い込んだのは、自民党政権による1986年の労働者派遣法制定と、その後のなし崩し的な全産業への拡大だ。

 2019年1月の総務省「労働力調査基本集計」によると、役員を除いた雇用者に占める非正規雇用労働者は38・3%と、18年12月に続き調査開始以来、最高となった。

 役員を除く雇用者数は13年1月の5179万人から19年1月は5628万人へと449万人増加。ところが、そのうち非正規雇用の増加数が327万人だ。増えた雇用の72・8%は非正規雇用だった。

 諸悪の根源=非正規雇用を拡大する労働者派遣法撤廃を求め、最低賃金全国一律1500円実現を掲げて、参院選に勝利しなければならない。

 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS