2019年07月12日 1583号

【「ひげ裁判」控訴審結審、勝利へ 維新市政の支配を跳ね返す】

 大阪市営地下鉄(現・大阪市高速電気軌道株式会社、以下「大阪メトロ」)の運転士2人が、ひげを理由に人事評価を下げられたのは憲法違反として市を提訴し一審で勝訴した訴訟の控訴審は、6月19日、第1回口頭弁論が開かれ、この日で結審。9月6日判決言い渡しが決まった。提訴から3年、「ひげ裁判」は運動を背景に勝利判決を勝ち取る重要局面を迎えた。

 この問題の本質は、維新市政による労働者支配との闘いであることだ。2011年、大阪市長に就任した橋下徹は翌12年6月、職員の5%に最低評価を割り当てる人事評価導入を柱に「職員基本条例」を施行し、支配強化にまい進する。この人事評価制度では、2年続けて最低評価になれば、分限免職もありうるとされた。

 同年9月、交通局運輸部(当時)は「職員の身だしなみ基準」を制定し、この男性の「顔・髭」欄には「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」と記載。交通局はこの「身だしなみ基準」を人事考課制度に反映させた。原告となった2人の運転士は「ひげ」を理由に13、14年度に低評価を受け、ひとりは分限免職もありうる状況に追い込まれた。

 19年1月16日、大阪地裁は、市に慰謝料など計44万円の支払いを命じる勝利判決を言い渡した。弁論で被告大阪市は「ひげを理由にした低評価ではない」と主張したが、地裁は「『身だしなみ基準』は任意の協力を求める趣旨なのに、上司が人事処分を示唆してひげをそるよう指導したり、人事評価でひげを主要な減点要素としたりしたことは趣旨を逸脱して違法」と断罪した。

交渉でも前進

 なかまユニオン大阪市職員支部は、「相対評価による人事評価のない働きやすい職場にしたい」という2人の思いを受け止め、大阪メトロユニオン(なかまユニオン大阪メトロ支部)結成を支援し、大阪メトロとの交渉に取り組んできた。4月19日の交渉で当局は「これまで社員の5%を必ず最低評価とする制度を廃止し、絶対評価が2点未満の社員を最低評価としている」と回答。また、「民営化にあたり、駅勤務や電車乗務などの業務実態を検討し直し、差を設けない方向となり、相対評価制度にはなじまない判断となった」と相対評価廃止の口頭回答を得ることができた。

 一方、前吉村維新市政は、非を認めず控訴したが、控訴理由書がひどい。判決後に集めた「ひげは不快」「ルールを破ってひげを剃らなかった者が悪い」との「市民の声」を「証拠」に2人にさらなる人権侵害を行うだけのものであった。高裁裁判長は、判決の期日と共に職権和解を言い渡した。内容に予断は許されないが、2人にとってより良い内容となるよう和解交渉が進められるに違いない。

 原告の一人は「地裁の勝利判決後も私達原告2人への人事評価での低評価は続いている。和解交渉で納得のいく内容にならなければ、高裁の判決に期待している」と語る。

 私たちが「裁判を支援する会」とともに取り組んだ「公正判決要求署名」1055筆をこの日、提出した。署名を一層拡大、継続するとともに、大阪市、大阪メトロに対する交渉など運動を背景に勝利するまで闘う決意である。

(なかまユニオン大阪市職員支部・三ツ林安治)

 
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