2019年07月19日 1584号

【参院選勝利で政治を変える (5)保育・教育 すべての子どもの人権保障/軍事費・富裕層課税強化が原資】

 子どもの権利条約は、18歳以下の子どもに関する施策は「子どもの最善の利益が主として考慮されるものとする」と定め、日本も締約国となっている。では、安倍政権の施策はこれを実現しようとしているのか検証する。

保育士の処遇改善が急務

 2019年10月から幼保無償化がスタートする。認可保育所、幼稚園は3歳から5歳は原則無料。0歳から2歳は住民税非課税世帯が無料となる。認可外保育施設やベビーシッターなどは利用料を補助する。親たちの切実な要求と世論に押されたものだが、最も保育需要増が見込まれる0歳から2歳の無償化へただちに拡張しなければならない。

 さらに、焦眉の課題は保育内容の充実だ。

 安倍は「待機児童ゼロ」を掲げ急ピッチで保育所を増設すると言うが、保育士が不足している。保育士の7割が新人という自治体すらある。

 保育士資格を持つ人は120万人だが、実際に保育所に勤務しているのは40万人。80万人がいわゆる「潜在保育士」だ。潜在保育士となっている理由は、労働条件(低賃金、長時間労働、休暇が取れない)が主だ。抜本的解決策は大幅な賃金アップのための運営補助増で人員を増やし長時間労働の解消につなげることだ。しかし、安倍が示した対策は「給与1%(3千円)増」。代わりに、規制緩和で特区では職員の3分の1まで無資格者で可とする。政府が定める保育基準は、子ども一人当たりの施設面積、保育士の配置数など世界水準の足元にも及ばない。しかも、日本では規制緩和で保育環境はますます引き下げられる。


子どもの最善の利益を軸に

 平然とこのような政策を打ち出すのは「子ども支援策」ではなく「子育て支援策」=親への「対策」であるからだ。無償化と施設乱立で親を「支援」するとし、専業主婦層を安価な非正規労働者として駆り出すことで労働力不足を補うのが資本の要求だ。そのためには保育の質などお構いなし、ベビーシッターでも可とする。子どもの最善の利益=保育を子どもの手に取り戻すため、無償化の拡充と保育の質の確保を同時に求めなければならない。

 同じことは、高等学校、大学にも言える。2011年、民主党政権下で始まった高等学校実質無償化は、安倍政権になって所得制限付きとなった。親の収入の多寡によって差がつけられた。根底には政府の「自助」「共助」「公助」がある。生活は市民それぞれの自助が基本、次に地域での共助、最後に国・自治体の公助で保障するというもの。子どもの学校教育もまず家庭が責任を持てという考え方だ。ここには、国連人権規約に定められた教育を基本的人権ととらえる思想はない。しかも朝鮮学校を対象外とし民族差別・マイノリティ排除の人権蹂躙を実行して恥じない。

教育は労働力生産工場に

 大学無償化はもっと露骨だ。所得制限や成績に加え、対象教育機関は「学問追究と実践的教育のバランスが取れている大学等」となる。企業での実務経験を持つ教員が授業の1割以上を担当していることや理事として産業界等の外部人材を複数任命していることが要件となる。

 学生・若者が現に苦しんでいる高学費や深刻な「奨学金」債務に抜本的対策を行い、生活と学びを支援するのではなく、「人材」生産に重点を置く。

 保育・教育を子ども・若者の基本的人権保障ととらえ、市民連合と野党の共通政策にある保育、教育関連予算の飛躍的拡充を実現すべきだ。

資料 立憲野党・会派、市民連合の共通政策より

9 この国のすべての子ども、若者が、健やかに育ち、学び、働くことを可能とするための保育、教育、雇用に関する予算を飛躍的に拡充すること。
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