2019年08月02日 1586号

【ミリタリー・ウォッチング 在日米軍 自衛隊 沖縄・南西諸島に情報保全隊/住民調査・監視は戦争準備】

 軍隊に「情報収集や統制」を名目にしたスパイ活動はつきものだが、自衛隊にもそうした機関が部隊として存在する。正式部隊名は情報保全隊。この部隊の存在と活動実態が市民の前に明るみになったのはそう昔のことではない。

 2007年6月、自衛隊のイラク派遣に反対し抗議活動を行う市民団体や個人などを監視し、その内容を記録した内部文書の存在が明らかになった。暴露された保全隊の文書には、全国289の団体・個人の情報を収集し、イラク派兵反対集会やデモについて発言内容や規模などが詳細に記録され、参加者も撮影されていた。旧陸軍の「憲兵」を思い起こさせる活動だ。

 同年、自衛隊の監視対象とされた住民らが監視の差し止めと損害賠償を求めた裁判では、一審仙台地裁が5人に対する損害賠償を認めたが、2016年2月の控訴審判決では1人のみの損害賠償となり、一審、控訴審とも差し止め請求は却下された。

 この国の司法の機能不全は、政府の違法行為を止めるどころか、増幅させる結果を招いている。違法行為を指示した防衛省の責任者はおろか実行者のだれ一人として明確な処分を受けたものはいない。

 実質的に国の勝訴となった控訴審判決を、軍事・平和問題研究家の前田哲男さんは「特定秘密保護法や安全保障関連法の運用について、防衛省など政府が強気になる恐れがある。自衛隊による市民への情報収集はより活発になるだろう」と指摘した。

密かに配備進む

 事実、急ピッチで大増強されている沖縄・南西諸島の自衛隊基地に情報保全隊が配備され、住民の前に立ちはだかろうとしていることが明らかになった。情報公開請求でわかったのは、すでに宮古島と与那国駐屯地に情報保全隊が配置されていたことだ。奄美大島にも配備されたし、建設中の石垣駐屯地にも配置される可能性が高い。この情報保全隊配備を防衛省は住民に一切説明していない。

 防衛省の隠蔽行為は、これまでにも、宮古島駐屯地の迫撃砲弾やミサイル誘導弾などの保管、与那国の弾薬保管の火薬庫を「貯蔵庫」と偽っていたことなどが次々と発覚している。こうした事実から浮かび上がるのは、急ピッチで大増強される南西諸島の各基地が、どれも本格的戦闘を想定した巨大な軍事拠点であるということだ。沖縄県内ではすでに陸海空の情報保全隊が那覇市を拠点に活動しており、沖縄・南西諸島の自衛隊基地建設でさらに活動が拡大することになる。

 沖縄防衛局は、辺野古でも「活動家リスト」を委託する警備会社を使って作成し、反対運動に圧力を加えている。配備された情報保全隊は「住民を調査・監視し、島嶼(しょ)戦争の対スパイ戦の任務に当たることが想定される」(情報公開請求した元自衛官で軍事問題ジャーナリストの小西誠さん)。保全隊が暗躍し、戦争準備を加速する沖縄・南西諸島へのミサイル基地建設はストップさせなければならない。

豆多敏紀
平和と生活をむすぶ会

 
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