2019年08月16・23日 1588号

【ZENKO不安定雇用撤廃分科会/「モノ」扱いされる労働者を組織化/安倍の経済報復に日韓連帯して反撃を】

 韓国の労働者が参加して「『モノ』扱いの労働を日韓連帯して変える!ユニオン運動と市民をつなぐ」をテーマに分科会がもたれた。

 基調は首都圏なかまユニオンの伴幸生委員長。「日本においてハラスメントが多発する背景には、40%に近い『不安定雇用』労働者が『モノ』扱いされている現状がある」とし「派遣先・派遣元ともに『雇用責任』が欠如しており『モノ』扱いされてきた当事者をユニオンが組織していくことが求められている」と課題を明確にした。

 この分科会の目的の一つは韓国における「不安定雇用」労働者の組織化と「不安定雇用」を撤廃させる闘いから学ぶことだ。

ブラックな国際映画祭

 韓国青年ユニオンのイ・ギョウン労働相談事務長が釜山国際映画祭スタッフの組織化と最低賃金引き上げに向けた取り組みを報告した。

 映画スタッフの組織化では実態調査がものを言った。1人の映画祭スタッフの情報提供をきっかけに、情報提供センターを設置し、オンラインでのアンケート調査を実施。それをもとに電話と対面インタビューを行い、34人からの情報を得た。さらに国会議員を通じて全国で開かれた映画祭スタッフの労働契約書292件を調査した。

 その結果明らかになったのは、(1)映画祭に関わる労働者の平均雇用期間が4・4か月。平均2年間で3つの映画祭に関わって勤務していること(2)雇用保険に入れないスタッフが87・6%もいること(3)開催期間10日間の「釜山国際映画祭」における賃金遅配の推定額が1億2400万ウォン(約1200万円)であることだ。

 この実態を突き付け、適正賃金及び予算確保の努力をすることや休息権及び健康権保障すること、そして標準労働契約を導入することとともに雇用安定のための正規職化及び契約期間拡大などを勝ち取った。

 最低賃金の引き上げに向けた取り組みでは、“平凡な暮らしのための平等な最低賃金”をスローガンに「最低賃金は、労働者の暮らしから決められなければならない」原則を市民へと広げることを目標に、SNSキャンペーンとともに青年に対してハガキ署名運動を展開した。

 経営者が要求している類型別最低賃金制は否決させたものの、2020年適用の最低賃金は好景気にもかかわらず3番目に低い引き上げ率にとどまった。

3人の死亡がきっかけ

 民主労総ソウル支部希望連帯労組のキム・ドゥヨン放送スタッフ支部長は放送制作現場の労働者の組織化を報告した。

 組織化のきっかけは放送制作スタッフ3人の惨事だった。ケーブルテレビ「チャンネルtvN」の放送プロデューサーで助監督の李ハンビッが16年10月26日自殺した。27歳の新人だった。EBS「ドキュメントプライム−野獣の箱舟」を制作中の朴ファンソン、金グァンイルが17年7月15日に南アフリカ共和国で交通事故にあい死亡した。

 これらの事件に対し、16年11月にSNS「新入り助監督死亡事件対策委員会」を開設、年末には「韓国放送ドラマスタッフ協会」を設立した。17年11月には、民主社会弁護士や非正規職団体、市民社会団体等が放送「職場パワハラ119」を開始した。

 12月にはSNS「開かれたカカオトーク部屋」を開設したことで、ドラマ・時事・教養・芸能等、すべての放送制作現場のスタッフ千人余りが不合理な制作現場のブラックぶりを告発し始めた。あわせて「放送スタッフ労組」結成を求める署名が自発的に集められ、「放送界の‘乙’ら集まれ!労働権ON、パワハラOFF」の会が組織された。

 18年3月、SNS「開かれたカカオトーク部屋」オフラインの会の2次会で 「放送労働者権利探し準備委員会」が組織され、5月には「放送界すべてのスタッフが共にする労組」設立が決議された。7月4日、希望連帯労働組合放送スタッフ支部の結成にいたった。

 今後は、ドラマ制作現場での不合理な契約や長時間労働の実態を告発して、国会記者会見を開き、さらなる闘争を展開していく方針が示された。

韓国の闘いと結んで

 日本からは、東リ偽装請負裁判、全国際自動車労働組合の残業代裁判、派遣会社の雇い止め撤回、セクハラ被害と不当解雇の撤回に向けた闘いの報告とともに、韓国労働者の闘いに学ぶ決意が出された。

 分科会の最後に、「日本の戦争責任を隠蔽し、韓日経済と労働者の生活に打撃を与える安倍の徴用工判決経済報復に断固反対しよう」との項目を決議案に追加し、日韓労働者の連帯をさらに進めていくことが確認された。



 
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