2019年08月16・23日 1588号

【ZENKO/JRリニア問題分科会/リニア建設・在来線廃線の阻止を決議/市民参加による公共交通も議論】

 2019ZENKOin東京で「分割民営化32年・JRの公共への転換を目指して」と題した分科会が行われた。昨年より参加者は少なかったものの、2時間半にわたって報告・討議が行われた。

破綻の象徴リニア・北海道

 前半では、リニア・市民ネット大阪の北川誠康さんが報告を行った。

 リニア誘致に必死となる奈良県生駒市や、日雇い労働者を冷遇する大阪・西成地区の状況、地下水の湧水で地上に通じる非常口の工事が中断に追い込まれている名古屋市内の状況などが写真を使って報告された。北川さん自身が現地を訪れるとともに、みずからも建設労働者として現場で働く経験も交えた報告となった。

 北海道からは昨年同様、安全問題研究会がローカル線問題を報告。昨年1年間に新たに地元が廃線に同意したのが札沼線(北海道医療大学〜新十津川)に限られること、北海道内でJR利用促進運動が展開されるようになったがローカル線対策としては不十分なこと、バス転換の問題点のほか、JR北海道による運賃値上げに反対する闘いなどが報告された。

 その後は参加者全員で討議。これからは人口減少が大きな問題となる中で、大量輸送機関としての鉄道をどうするかという問題点の指摘、日本の人口が1億を割ることが確実視される中、都市に人口を集中させ、強い都市をますます強くするのがリニア推進派の主張だとして格差拡大の観点からリニアに反対する意見などが出された。4月の道知事選で当選した鈴木直道知事が夕張市長時代に推進したコンパクトシティ構想も同じで「“地方に住むのは住民の自己責任。自分の意思で住む以上、不便を甘受すべきだ”という新自由主義思想が根底にある」と「官邸直結」新知事に警戒することが訴えられた。

 「大阪でも郊外ではバスの減便が進む。運転手不足の背景に低賃金、重労働がある。障害者の乗車拒否が起きているのも現場の余裕のなさが原因だ」「農業や鉄道は儲かるものではない。競争してはいけない公共的領域だ」と、公共交通労働者の待遇引き上げや新自由主義に侵食されてきた分野で公共の概念を取り戻すよう求める発言も続く。

あるべき公共交通とは

 事務局が提案した「新幹線台車亀裂事故を起こし、反省もないJR西日本を監視」という決議案には「安全に問題があるのはJR西日本だけではない。対象をJRグループ全体に広げるべきだ」、また「利用者・市民が決定権を持つ民主的な公共交通の確立」との決議案には「民主的な公共交通の意味がはっきりしない」と具体化を求める意見が出された。

 JRについて「再国有化」の文言を入れるよう求める声に対し、「単なる国有化で官僚がすべてを決めるというのでは意味がない。官僚が口を出せない、労働者や市民が主人公となるような経営形態が公共交通には必要」との意見も出された。旧営団地下鉄(現・東京メトロ)にかつて存在した「管理委員会」をモデルに、より民主的にした合議制の意思決定機関を置く、との具体的な提案もあった。

 討議の結果、4項目の決議を参加者全員で採択した。
 
〈採択された決議〉

 (1)環境破壊、税金無駄遣い、「アベ友」葛西優遇のリニア新幹線建設や、北海道をはじめとする全国のローカル線廃線を阻止し、未復旧線区の早期復旧の実現を求めよう。(2)JRグループによる駅廃止・無人化、車内販売廃止などのサービス切り捨てに反対しよう。(3)新幹線台車亀裂事故に象徴される、反省もないJRグループを監視し、安全最優先を求めよう。(4)労働者、利用者、市民が経営に参加できる公共的な交通機関の運営形態を確立しよう。

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