2019年08月30日 1589号

【重要政治方針を決定したDSA大会 現地報告(2) 民主主義的社会主義の原則を貫き 地域の人びとを気にかける活動】

 全米最大の社会主義団体DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の隔年大会(8/2〜8/4)にZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)、MDS(民主主義的社会主義運動)を代表して参加した日南田成志さんに、前号に続き、大会論議の報告を寄せてもらった。

 大会では、全米から結集した千人以上の代議員が白熱した討議を展開した。2017年大会時点で約2万5千人だった会員がこの2年で6万人近くになり、提案された決議案も前回から倍増している。

「成長痛≠フただ中」

 雪崩を打つようにDSAに結集する若者たち。70年代から社会主義運動に携わってきた古参会員たちと、つい最近社会主義≠ニいう言葉にふれるようになった若い活動家たちとの間でどのような“共通の言語”を見いだし、すべての会員が主体となって民主主義的社会主義を実現する組織へとどう脱皮していくか。「DSAは今そのための“成長痛”を味わっているのだ」と表現する代議員もいた。

 多様な政治的潮流を内包しているがゆえに常に組織的な分裂や分岐が危惧されるが、DSAはその多様性をアイデンティティーと自認し、むしろ組織の長所としているようだ。大会では、多様な政治的立場による意見の違いを民主的な討論を通じて克服し、多くの闘う方針が確立された。

選挙戦で根本的対案

 採択された重要な政治決定の一つは、選挙闘争に関わってDSAの政治的独立性をどう確保していくかについての決議である。

 DSAは、これまで党を名乗らず、「多元的かつ複数の政治的潮流を内包する活動家の政治組織」と自らを規定してきた。特に国政レベルでは、民主党予備選にDSAメンバーあるいは進歩的候補を立てて民主党内左派として勢力を拡大している。2020年大統領選に向けても、民主主義的社会主義者を公言するバーニー・サンダースの組織推薦を決定し、民主党の大統領候補者指名キャンペーンをすでに開始している。この民主党との関係の中で、DSAは今後どのように民主主義的社会主義者の組織として前進しようとしているのか。

 まず、もしもサンダースが候補者指名に敗れた時には、他のどの候補も推薦しないとする決議が採択された。これは、サンダース以外に社会主義者を名のる候補者はおらず、民主党との関係に原則的な線引きをするものだ。また、サンダースに対し、弱いとされてきた外交面での原則的な左派の方針を全面的に主張するよう求める決議も加えられた。具体的には、イエメン空爆を続けるサウジアラビアへの軍事援助中止、イラン核合意への復帰、気候変動パリ協定への復帰などだ。

 さらに、DSAが選挙闘争に社会主義者として関与し、支援候補には資本と対決する根本的な対案の主張を求め、選挙戦では労働者の階級意識を高めて戦闘性を引き出す方向で積極的に貢献することを確認。現在の二大政党制の選挙制度の下では次善の策として民主党から出馬しているが、「将来的には、民主党から分岐して党をめざす」という文言も入れられた。

2021大会へ政治綱領作成

 これらの決議に加えて、全国政治委員会からは、政治綱領の作成にかかわる決議案が提案され採択された。決議によれば、「全国政治委員会はDSA2021年大会で簡潔な政治綱領が採択されるよう準備を進める。この政治綱領は、DSAの各支部と選出政治委員の取り組みを導く分析・戦略・要求事項を含み、DSAの実際の活動と政治的な主張に一貫性をもたせ、組織内での政治教育および外部への宣伝の基盤となる。2年間にわたる草案作成のプロセスには、各支部、各個人会員が、文書、ネット会議、実際の会議を通じて積極的に参加する」とされている。

 その他、環境社会主義の立場からグリーンニューディールの全面展開を求める決議案もほぼ全会一致で可決された。脱炭素化と再生可能エネルギーの普及によって雇用を創造するために積極的な公共投資を求める内容だ。

国際連帯の発展めざす

 大会には、連帯関係にある海外の政党、運動団体から14人の同志がオブザーバーの資格で招かれた。ドイツ左翼党、欧州左翼党、カナダ・ケベック連帯、ブラジル社会主義自由党、ベネズエラ前大統領筆頭補佐官など。アジアからはZENKO・MDSに加えてフィリピンの労働大衆党代表が参加した。大会期間中、夕方以降の時間帯で国際ゲストを囲んだ報告会や国際連帯の夕べの企画がもたれ、私も、沖縄新基地建設や韓国チェジュの軍事空港建設、ソソンリのミサイル配備を日韓市民の連帯で阻止しようとしていることを訴えた。

 DSA国際委員会は、現在約30人のメンバーで月1回のネット会議を開催している。各支部レベルの国際連帯活動の推進、全国政治委員会への国際関係拡大の提起、海外の社会主義者組織とのネットワークづくり等に取り組んでいる。しかし、その活動はまだ緒に就いたばかりのようだ。

 共同代表の一人、イーサン・アールさんは「海外の社会主義諸組織と連帯関係を築き、DSA会員が国際連帯活動の重要性をより意識できるようにしたい」と熱く語っていた。2019ZENKOへのDSA代表招請と日本からのDSA大会参加は、今後の連帯関係の大きな一歩となった。この連帯関係のさらなる発展をめざしたい。

「ブレーキランプ診療所」

 ZENKOでは、国際委員会のビル・イェィツさん(シアトル支部)が、戸別訪問による地道な地域変革活動を報告した。大会代議員に尋ねると、戸別訪問活動はどの支部でも当たり前のこととして取り組まれている。メディケア・フォー・オールへの賛同を広げるものや、各地域での選挙キャンペーンのための戸別訪問が多かった。

 ビルさんは支部で行っている地域の清掃活動について言及していた。大会でも、南部ルイジアナ州ニューオーリンズ支部の代議員ケイトリンさんから地域の「無料ブレーキランプ診療所」開設の取り組みを聞いた。週末に道路わきの空き地にテントを立て、通行する車のブレーキランプが切れていないかをチェックする活動だ。もし切れていれば無料で部品を交換する。

 この取り組みの背景に、連日5万件にも及ぶ警察の自動車検問があるという事情がある。多くの人が車両整備不良など微罪で検挙され、その割合は有色人種が圧倒的に多い。罰金の支払いから最悪では逮捕、投獄に至ることもある。差別的な法執行の実態が全国で見られるのだ。気づかずにブレーキランプが切れたまま運転していると、検問にかかり、とんでもないことになる可能性が常にある。

 ニューオーリンズ支部では、「無料ブレーキランプ診療所」活動を通じて、地域住民と、警察の暴力や人種差別的な法執行制度について対話し、より平等で公平な警察を求める声を拾いあげている。それが対話を進めるきっかけになる。この取り組みは他州のDSAにも飛び火し、今では多くの州の支部で行われているという。ケイトリンさんが「地域の人びとのことを気にかける支部にしたい」と言っていたのが印象的だった。





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