2019年08月30日 1589号

【「表現の不自由展」中止/日本軍「慰安婦」問題を消し去る狙い/「維新」の暴挙は許さない】

 国際芸術祭あいちトリエンナーレで「平和の少女像」が展示された「表現の不自由展」が中止になった。

 「テロ予告や脅迫電話」が許されないのは当然だが、さらに問題なのは自治体首長や政府要人が作品内容を理由に展示中止の圧力を加えたことだ。河村たかし名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじるものだ。税金を使ってやるべきものではない」発言。菅義偉官房長官も補助金の交付の是非を検討すると述べた。

 これらは憲法21条が禁じた「検閲」にあたり、表現の自由の侵害である。これでは、政府を批判するものは何一つ表現できない状態になってしまう。

 この動きを助長させたのが、大阪維新の会である。3代にわたる「維新」の大阪市長は、日本軍「慰安婦」問題をめぐる暴言・暴挙を執拗に繰り返してきた。「『慰安婦』制度は必要だった」と発言し、世界から批判された橋下徹。サンフランシスコ市の「少女像」設置に「抗議」し、姉妹都市を一方的に解消した吉村洋文(現大阪府知事)。そして「強制連行された『慰安婦』はいない」と述べ、「少女像」は「デマの象徴」「事実とかけ離れた誹謗中傷的な作品」と決めつけた松井一郎現市長。吉村は、芸術祭の実行委員会会長を務める大村秀章愛知県知事に対し「辞職相当だ。責任を取るべき」とまで攻撃を強めている。

 こうした「維新」の暴挙に対して、私たちOPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)も、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの呼びかけに応えて8月9日、松井市長への抗議・要請と市役所前での宣伝行動に参加した。「『平和の少女像』は戦時性暴力の凄惨な歴史を記憶し、繰り返さないという被害者らの意思を象徴するものです。『平和の少女像』に投げつけられた侮蔑の言葉は、女性の人権を願う態度からかけ離れたもの」との声明には80団体が賛同。行動に参加した40人以上の市民は、歴史を歪曲する市長の態度に怒りをぶつけた。

 日本軍「慰安婦」の問題を葬り去ろうとする日本政府の動きに対抗して、謝罪と補償を求める行動にアジアの市民・女性たちは立ち上がっている。8月14日は、韓国では「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」。ソウルでは数千人の市民が集会を行った。台湾とフィリピンでも日本軍「慰安婦」とされた女性を支援し、日本政府の責任を追及する行動が行われた。私たちも引き続き、維新と安倍政権による日本軍「慰安婦」暴言撤回、展示の再開をめざして取り組みたい。

(OPEN・山本よし子)

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