2019年09月13日 1591号

【またも米軍ヘリ落下物事故 沖縄県民はいつまで危険にさらされ続けるのか】

 沖縄県民は、いったいいつまでこんな危険な状況にさらされ続けられるのか。

普天間二小と同型CH53

 8月29日、米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリがまたも窓を落下させたことが明らかになった。落下事故が発生したのは27日午後5時半ごろ。沖縄島東海岸沖8キロの海上に、重さ約1キロのプラスチック製の窓を落下させたとみられる。

 今回事故を起こした大型輸送ヘリは、2017年12月宜野湾市の普天間第二小学校の運動場に窓枠を落下させた輸送ヘリと同型機だ。CH53は最も事故が多く、復帰後の米軍ヘリ事故件数全体の3割にも上る。相次ぐ事故の背景に導入から40年経過した機体の老朽化に加え整備不良などが指摘されるが、後継機への切替えの遅れから古い機体を飛ばし続けているのが実態だ。恐ろしいというほかない。事故が起こるのも必然だ。

 今回、沖縄防衛局から沖縄県や関係自治体への通報が事故発生から2日後と遅れたことに、地元からは頻発する落下事故と合わせて激しい反発が起こった。

 米軍による事件事故時の「迅速な通報体制」として、日米合同委員会合意に基づいて「正規通報経路」がある。地元在沖米軍から沖縄防衛局に通報できるルートだ。だが、今回米軍はそのルートを使わず、日本側への通報が事故翌日、地元にはさらにその翌日となり大きく遅れた。

 謝花喜一郎副知事は8月29日、「ここ数年間で事故は極めて多い。米軍の管理体制と日本側との連絡体制はどうなっているのか。県が再三再四求めてきたものが、一体どう教訓として生かされたのか疑問を抱かざるを得ない」と厳しく批判。翌30日には県庁に田中利則沖縄防衛局長と河村裕外務省沖縄大使を呼び出し抗議、同型機の1週間運用停止や原因究明を求めた。


飛行停止、基地閉鎖だ

 岩屋毅防衛相は30日の会見で「通報に時間を要したのは遺憾」とし米側に再発防止を求める一方で、前回は普天間第二小学校事故当日に米側に求めた飛行自粛は求めなかった。落下場所が「海上のため被害がない」からだと言う。

 人命無視のこの対応に県民からは「誰かが死ななければ危険な状況は変わらないのか」「被害がなかったから良かったではない。県民の生命に関わる問題なのに防衛相は何とも思わないのか」など怒りの声が上がった。

 事故を再び起こさないためにはもはや飛行停止させるしか方法はない。このまま飛び続ければ大惨事が起こるのは目に見えている。普天間基地は即時閉鎖以外にないのだ。

2つの訴訟を注視

 名護市辺野古の新基地建設をめぐり現在、沖縄県は二つの裁判で国を訴えている。7月17日に地方自治法、8月7日に行政事件訴訟法に基づき、辺野古埋め立て中止をめざす。

 どちらの裁判も、埋め立て承認を撤回した県の行政処分に対して、行政不服審査法を悪用し、沖縄防衛局の中嶋浩一郎局長が一私人になりすまして国土交通相に撤回を取り消すよう求め、今年4月国交相がそれを認める裁決をしたことは違法と訴えた。

 行政不服審査法は、一般の市民が国や県の許可や許可取り消しなどに不服がある場合、簡単な手続きで審査請求できるものだ。ところが、一般市民ではない公権力を行使する立場の沖縄防衛局長が、同じ国の機関である国交相に撤回取り消しを求め、求められた国交相が取り消した。本来、法律では考えられないことを安倍政権は平然と行なった。この無法を断罪し、工事を止めることが目的だ。7月提訴の裁判は「撤回を取り消した国交相裁決=国の関与」の違法性を、8月の裁判は「県が国を訴える資格があるか、県の撤回は適法か」を争う。

9月18日に第1回弁論

 7月の地方自治法での裁判が先行し、8月の裁判は裁判所が審査するかどうかという入り口≠突破できるかがまず問題となっている。

 いずれにしても、玉城デニー知事は、裁判結果がでるまでは工事に関わるサンゴ移植の申請などの裁決は行わないと決めている。国は工事を次の段階に進めることができなくなっている。そして7月の裁判で県が勝訴し、知事が直ちに埋め立て承認を再撤回すれば、国は再び行政不服審査法を使った撤回取り消しはできなくなる。埋め立て承認は白紙に戻り、工事は止まる。

 7月提訴裁判の第1回口頭弁論は9月18日高裁那覇支部で行われ、デニー知事が意見陳述する。異なる手法で国を訴えた二つの裁判の行方を注視し、無法がまかり通ることを許さない世論を全国に広げなければならない。 (A)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS