2019年09月20日 1592号

【ICRP(国際放射線防護委員会)新勧告案 年1mSv上限否定は被ばく強要だ 市民の声をパブリックコメントへ】

 ICRP(国際放射線防護委員会)が「大規模原子力事故における人と環境の放射線防護」勧告の改訂案を公表し、パブリックコメントを募集中だ。住民の被ばく線量限度である年間1_シーベルトを事実上否定する新勧告案に対し全国で批判の取り組みが行われている。大阪での公開学習会(9月7日、主催 低線量被ばく問題研究会など)に参加した放射能検診100万人署名運動全国実行委員会・小山潔さんに寄稿してもらった。

 ICRPの構成員は核兵器や原発開発国の官僚、御用学者らと重なり、国際原子力マフィアの利害を代弁した勧告は、各国の原子力規制法令に強く反映される。今回の新勧告案に関わった日本人委員にも現職の原子力規制庁職員などが複数いる。

 とはいえ、チェルノブイリ原発大事故後の1990年勧告では「公衆の被ばく線量の上限は年間1_シーベルト」とされ、日本の法令にもこれが線量限度として定着してきた。

 ところが2007年勧告は「事故後、回復期の住民の被ばく線量の参考値として年間1〜20_シーベルトの範囲内で各国が選択」と緩和。安倍政権が上限1_シーベルトの法令を無視し、年間20_シーベルトで避難指示解除を進め、裁判所がそれに追随して原発事故被害者への賠償を極めて狭く見積もる“拠り所”もここにある。

 その企てをさらに進めるのが新勧告案だ。

事故対策の定式化狙う

 新勧告案は、国際原子力利権グループ側から見た福島大事故対策の成功例と教訓≠定式化する。住民の被ばく線量規制を一層緩和し、住民の不安や要求を抑える手段も行政当局に提案する内容だ。

 例えば、▽勧告する「参考レベル」は被ばく線量の上限値ではなく「対策」をとるための基準値とする▽参考レベル年間1_シーベルト程度はあくまで徐々に低減していく長期的な「目標」である▽甲状腺検査は子どもの時に甲状腺吸収線量が100〜500_グレイ(_シーベルトと同等)であった住民に限定すべき▽甲状腺がんの発生は放射線被ばくの結果とはいえない―などなど。

 これらは、「上限年間1_シーベルト」を明記する日本の現行法令を緩和し、甲状腺検査を大幅に縮小する圧力に使われる。「年10_シーベルトを超える必要は一般的にはない」との記載があるものの、「1〜20_シーベルトの範囲内から選ぶべき」と20_シーベルトの枠組みは維持されている。

 一方、新勧告案は、小児甲状腺がん患者が230人を超えたこと、区域外避難者の苦しみや訴訟、国連人権理事会が日本政府に避難者・住民施策の是正を求めた勧告などには一切ふれない。

ICRPに突きつける

 公開学習会では「避難者は『利害関係者』に含まれていない」「安倍政権は8年間も20_シーベルトを防護の基準に使ってきたが、その批判が全くない」などの意見が出された。主催者らは、福島の実情、避難者の声を直接ICRPと世界に訴えることに意味がある、パブリックコメントを出そう、共同パブコメにも賛同を、と呼びかけている。

 パブリックコメント投稿は10月25日まで。日本語でも可能だ。危険な新勧告案批判を広げ、被ばく強要を許さない市民の声を突きつけよう。

市民団体8団体による勧告案全文の仮訳

日本語での投稿方法

◆京都・市民放射能測定所 緊急学習会「ICRPの勧告案を検証する!」 9月16日(月・祝)13:30〜  京都市呉竹文化センター
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS