2019年11月22日 1601号

【議会を変える 東京都足立区議 土屋のりこ 「表現の不自由展」に入った】

 表現の自由を大きく世に問いかけた、あいちトリエンナーレ・表現の不自由展。10月8日再開の報を受け、観に行こうと思い立った。

 直前の委員会質疑で、公的機関が表現の自由を侵してはいけない、行政が芸術に介入すべきでない等を取り上げた。今年のトリエンナーレは芸術と政治・ジャーナリズムの融合に挑戦していると知り、抽選に外れても他の作品を見る価値大いにあり、と思えた。

 会場入りしたのは最終日。定員240人に対し約3100人がつめかけた中、2回目の抽選で当選をゲットできた。

 ただ「安全対策」として展示室内にカバン等は一切持ち込めない上、金属探知機を通って入室する徹底ぶり。そこここに黒スーツの目つきの悪い警備員も配置されていた。

 不自由展は、過去に公共施設での展示が検閲を受けたものを集めた展覧会内展示企画で、非常に挑発的な企画だ。一度取りやめとなった企画が再展示されることは世界でもないこと。再開を勝ち取った不自由展実行委員会の芸術家はじめ関係者に拍手を送る。

 入室し、『遠近を抱えてPart2』(昭和天皇の写真を焼いていると批判の的になった作品)上映後に、出品作家の方から挨拶があった。「作品を見る場所をなくすことはやめてほしい。(中略)安倍政権になってから放射能・福島・慰安婦・朝鮮などNGワードがあり、背くと首相側近部署から直接クレームが来るそう。要するに言いたいことは、安倍政権ひっくり返そう」(!)―40名の参加者から大きな拍手が。反対派か賛成派かと互いに疑心暗鬼だった参加者同士に一体感が生まれた瞬間だった。

 事実を突きつけられても虚偽を信じたいという「情」とは何か―「情の時代」を扱ったあいちトリエンナーレ。「日本軍慰安婦」の事実を頑なに無視したい人や右翼的な人たちによって中止に追い込まれながら、芸術と市民の力で再開を勝ち取った。一連の経緯そのものが壮大な表現の不自由展だったのだろう。

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