2019年11月29日 1602号

【国土を汚染し評価を落としたのは国だ/区域外避難者を中傷する暴論を批判/原発賠償群馬訴訟 支援する会が抗議声明】

 原発事故で避難を余儀なくされた被害者が国と東京電力に損害賠償を求めて前橋地裁に起こした裁判の控訴審第7回口頭弁論(9/17)で、国側代理人は「避難区域外からの避難者に損害の発生を認めることは、そこに居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となる」と区域外避難者を誹謗・中傷するとんでもない暴論を開陳した(前号2面参照)。

 これに対し、11月5日に開かれた第8回口頭弁論では原告側代理人が「国の主張は滞在者と避難者の分断を図るもの。『国土の汚染』を起こしたのはまさに国であり、責任は国にある。責任転嫁もはなはだしい」と全面的に反論する意見陳述。弁護団事務局長の関夕三郎弁護士は報告集会で「大勢の人が残っているからといって少数派の避難した人たちは黙らなければいけないのか。割を食っている少数の人たちを助けるべき司法の場で、あり得ない。“国土の不当な評価”とはネトウヨが書くような話。国民の代わりはいくらでもいるが国土の代わりはないから、国土を汚すことをする国民はいらない、ということだ」と語気鋭く批判する。

 この日、「原発事故損害賠償群馬訴訟 支援する会」の名で「群馬訴訟での国の主張に対する抗議」が発せられた。「避難の選択が尊重されなければならないことは『子ども・被災者支援法』2条にも明確に規定されている。滞在を選択した人の中で、避難した人の選択を否定する人は決して多くない。放射線被ばくを危惧し、避難すべきではないかと今も葛藤を抱える人が少なくない。避難が『滞在住民の心情を害する』ときめつけることは、滞在者の実情とも合致しない」と指摘し、開き直りと言うべき主張を撤回するよう国に求めている。

 抗議文をまとめた原告の丹治杉江さんは「県ふたば医療センターには医者がヘリコプターで来る。80床ある介護施設も介護する人がおらず40人しか受け入れられない。浪江町に2010年には1773人の小中学生がいたが、今年は16人。命を育て命を守る学校や医療や介護がこういう状況だ。お年寄りが一番大切にしているのが孫の写真。でも、孫たちは会いに来てくれない」と話し、「滞在者のみなさんにこの抗議文を送った。誰ひとり反対する人はいない。『こんな国の言い方は私たち自身を侮辱するもの。丹治さんが国に抗議するときは私たちも同席する』と言ってくれている。分断されることなく国と東電の責任を追及しよう」と呼びかけた。

 群馬県最北端のみなかみ町を朝4時に出発して裁判にかけつけた原告の男性は「国民は国土の下にあるとする自民党改憲草案を思い起こした。『あたらしい憲法草案のはなし』も、国があって国民がある、国のために死ぬことに反対するのは国民のわがまま、犠牲はやむをえない、と言っている」と国側主張の背景を分析する。

 次回口頭弁論は2月4日午後1時半から東京高裁101号法廷で。裁判官による現地検証(現地進行協議)が2月7日浪江町などで行われ、4月21日に結審する見通しだ。

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