2019年12月20日 1605号

【みる…よむ…サナテレビ(539)2019年12月7日配信 イラク平和テレビ局in Japan/社会の不公平に抗議するイラクの市民デモ】

 2019年10月、イラクでは市民による反政府デモが続いた。サナテレビは、バグダッド市民がどのような怒りと要求を持ってデモに参加しているのかについてインタビューした。

 最初に登場するメディア関係者のカリーム・ジャシム・ファジさんは、イラクの歴代政府の下で深刻な格差拡大が進んだことに怒りを込めて訴える。「高級官僚や国会議員の賃金の最高額は(月額)1000万ディナール(約90万円)だが、清掃労働者の日給は8000ディナール(約760円)だ」。日給がこれでは、まともな暮らしなどできるはずがない。

 もう一人のメディア関係者は、翌日に予定される政府への抗議デモにむけて、「デモは、市民が悲惨な現実を変える整然とした方法であり、正当な権利なのです」と決意を語る。彼は平和的なデモを整然と行うことを訴えているが、周辺諸国による介入で多数の犠牲者が出るのではないかと危惧している。

 実際、世界中のメディアが報道しているように、市民の平和的なデモに対して、政府の治安部隊や宗派の私兵が攻撃し、何百人もの死者と2万人ともいわれる負傷者が出ている。

 別のデモ参加者は政府や宗派私兵の策動について指摘する。バグダッド中心部のタハリール広場でデモが予定されているのに対し、「近くの3つのビルに政府が5人ずつ兵士を配置しようとしている」と言う。「私たちは兵士が攻撃してきたら写真を撮って証拠にしてきた」と語っている。デモ参加者は写真を撮影し、政府側の不当弾圧を暴いて対抗している。市民の大規模なデモと政府の弾圧が対峙する現場の厳しい雰囲気が伝わってくる。

 アブドルマハディ政権は市民の平和的なデモに実弾を発射するなど、激しい弾圧を繰り返している。この政権を支えてきたのが米国や日本の政府とグローバル資本だ。

 しかし、市民の闘いによって、アブドルマハディ首相はついに辞任を表明せざるを得なくなった。闘い続けるイラク市民への弾圧を許してはならない。日本からも声を上げていこう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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