2020年01月03・10日 1607号

【住宅追い出しから避難者守る/生活・人権獲得の闘いに連帯】

 原発事故の区域外避難者への唯一ともいえる救済策=住宅無償提供が打ち切られてから間もなく3年を迎える。

 福島県が、帰還強要にかじを切った政府の「福島復興加速化指針」改訂閣議決定(2015年6月12日)に連動し、3日後に「区域外避難者の住宅無償提供2017年3月末打ち切り」を発表したのが事の始まりだった。

 同じ15年の12月25日、福島県は打ち切りに伴う支援策として、民間賃貸住宅入居者補助―入居の初期費用(10万円)、家賃(1年目月3万円、2年目2万円上限)―を打ち出し、それまで「みなし仮設住宅」として確保されていた民間賃貸住宅や公営住宅、国家公務員宿舎、雇用促進住宅などからの17年3月末までの一斉引っ越し(退去)を迫った。

一人も路頭に迷わせない

 住宅無償提供継続を訴える「ひだんれん」(原発事故被害者団体連絡会)や各地の避難者支援団体などは、“一人も路頭に迷わせない”と追い出し反対・公的住宅確保の闘いに取り組む。全国の自治体で、避難者の公営住宅優先入居や民間家賃補助の上積み、国家公務員宿舎の継続入居(有償)など、わずかながら諸施策を実現させてきた。

 また、打ち切り後2年間、民間賃貸住宅に入居していたが家主の都合で公営住宅か新たな民間住宅に引っ越しを余儀なくされた世帯を除き、国家公務員宿舎・公営住宅に住み続ける避難者の強制退去は行われないまま今日に至っている。これも運動の成果だ。

 ところが福島県は19年4月以降、民間家賃補助の継続や国家公務員宿舎への継続入居を求める声を無視し、すべての支援策を終了させた。そのため、▽引っ越ししようにも民間家賃支払いが不可能▽精神疾患で先行きの見通しがつかない▽公営住宅の入居資格がない▽資格はあっても当選しない―といった避難者が国家公務員宿舎に残り、「家賃2倍請求」「未契約者追い出し訴訟」問題として攻撃の矢面に立たされることになった。原発事故被害に見合った法制度が不備無策のため、たまたま国家公務員宿舎に避難した人たちが二重の被害に遭遇している。福島県が言う「個々人に寄り添い、事情に応じて対応する」とは世間向けの真っ赤なウソだ。

全避難者の人権保障を

 福島県がみなし仮設住宅入居者に住宅提供終了宣告文を送付したのは2016年8月25日。翌26日に福島県・財務省・復興庁3者で「国家公務員宿舎に係る打ち合わせ」を行い、「国が直接使用許可することは難しい。各都道府県で(間に入ることが)できないのであれば、福島県を挟んでやるしかない。期限を定めた方が効果的。民賃補助の期間(最大2年間)と一致させる。期限を超える対応が必要なときは別途協議する」(財務省)「期限を定めた方が確かに効果的」(福島県)とやり取りした。国・県一体となった棄民政策である。

 原発事故の避難指示区域が次々と解除され、区域内(強制)避難者への救済策も大熊町と双葉町を除いて20年3月で基本的に打ち切られようとしている。先に避難指示が解除された南相馬市(小高区)・川俣町・葛尾村・飯舘村の避難者に対する応急仮設住宅の無償供与は19年3月で終了した。続いて、葛尾村・飯舘村の帰還困難区域と富岡町・浪江町からの避難者も20年3月に終了とされる。医療費無料化や高速道路無料措置も打ち切られる見込みだ。残るはその他の帰還困難区域と大熊町・双葉町だが、ここも一部を「特定復興再生拠点区域」として整備し、避難指示解除を進める方針だ。

 浪江町から県内外に避難する高齢者は口をそろえて病気や介護の不安、コミュニティ破壊による孤立感を訴えている。「病院通いと投薬が不可欠になった。帰っても大きな町までの病院通いがむずかしい」「もし倒れても、子どもたちは帰っていないし、介護施設も機能しておらず、生活は無理」「以前のようなコミュニティは戻らない」

 区域外避難者への住宅追い出し攻撃から当事者を守り、連帯する闘いは、避難者全体の生活と人権を獲得する闘いそのものである。

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