Q 最近「ジュビリー二〇〇〇キャンペーン」という言葉を聞きますが、何のことですか。
これは、「二〇〇〇年を期して途上国の債務を帳消しにして新たな出発をしよう」という国際的な運動です。ジュビリーとは、旧約聖書にいう五十年に一度のヨベルの年に奴隷が解放され借金が帳消しにされたという言い伝えにちなんだものです。九〇年にアフリカのキリスト教協議会の呼びかけで始まり、その後さまざまな国際NGO(非政府組織)が賛同し、九八年には世界七十か国に広がりました。
九八年のバーミンガム・サミット(主要国首脳会議)の時に国際的な示威行動に取り組み、七万人の人びとが債務帳消しを訴えました。この時は具体的な前進はありませんでしたが、翌九九年六月のケルン・サミットでは主要国側は重債務最貧国に対する政府開発援助(ODA)の一〇〇%放棄などの措置を打ち出さざるを得なくなりました。
債務返済で悪化する国民生活
債務問題が国際的焦点になってきた背景には、アフリカや中南米諸国などの〈南〉の国々における国民生活の著しい悪化があります。キャンペーンのために来日したニリンギエ牧師の話によると、ウガンダでは生まれた千人の赤ちゃんのうち百八十人は五歳まで生き延びることができません。四八%の人しか医療機関に通えず、五四%の人が安全な水を得ることができません。スラムには公衆トイレがなく、みんなポリ袋に排泄してそれを外に捨てています。こうした全国民的貧困を抱えながら、ウガンダ政府は毎年保険医療予算の十倍の金額を債務の返済にあてています。
〈南〉の国々の貧困は、過去の植民地支配と無関係ではありません。そして累積した債務は、先進諸国が「人民革命に対する防波堤」として支援・育成した軍事独裁政権に対する援助・融資の残りカスという側面も持っています。貸している〈北〉の国にも、責任があるということです。しかも、債務国は利払いを含め、すでに十分に返済してきています。だから〈南〉の国々のNGOでつくるジュビリー・サウスは、「ジュビリーとは救済の要求ではなく、権利回復と補償の要求だ」と述べているのです。
全世界の注目浴びる沖縄サミット
ケルン・サミットは債務帳消し運動の前進を示すものとなりましたが、そこで打ち出された措置は極めて不十分なもので、ジュビリー・サウスは激しく非難しています。最大の問題点は、ODA債務の帳消しが「構造調整」プログラムの実施を前提としていることです。国際通貨基金(IMF)が求める「構造調整」プログラムは、債務国に失業と生活破壊をもたらし、人々を苦しめています。「ジュビリー二〇〇〇」は、債務帳消しと「構造調整」の切り離しを求めています。
四月中旬にワシントンで行われたIMF閣僚会議の直前、途上国グループ(G77)の初の首脳会議(百三十三か国参加)がキューバの首都ハバナで開かれ、「不均衡の拡大を阻止する新国際秩序の構築」「中所得の途上国も対象にした対外債務問題の解決」などをうたったハバナ宣言を採択しました。G77グループは沖縄サミットで債務帳消し問題を討議するよう「日本に提案している」(ムベキ南アフリカ大統領)と伝えられます。「ジュビリー二〇〇〇」も、サミットに合わせて沖縄で国際会議を予定しており、沖縄サミットは債務問題でも国際的注目を浴びることになるでしょう。