2000年06月09日発行643号 ロゴ:なんでも診察室

【イギリスで大反響】

 前回、紹介しましたように、四月二十六日から世界の医学研究を徹底的に検討する「コクラン共同計画」のイギリスでのミーティングに行って来ました。

 関西空港からヨーク市まで、金魚の糞のように共同研究者の柳君にひっついて到着。

 翌朝からミーティングが始まりました。報告の途中でも疑問が出されれば論議し、参加者全員が共通の理解をしながら報告を聞く形で進行するのに感心しました。

 昼食の間、これまでメールなどで私たちの研究の指導や世話をやいてくれている人たちと挨拶をかわしました。これからは、お互い顔をうかべてメールができます。ここに来た目標の一つは達成したわけです。

 二日目、私の発表です。私の英語の発音では、意図はほとんど伝わらないのではないか? ともかく、十五分間原稿を必死で読み上げました。スライドの表や文章が通じたのか、報告内容には大きな反響がありました。私は日本における喘息治療の現状と、効かない薬でも効くように評価する「全般改善度」という薬の評価尺度を批判的に報告したのです。

 日本の喘息治療法は、世界の常識とあまりに違うので、「日本の喘息の定義は世界的な喘息と違うのか?」とか、「日本は文化的な国なのにどうしてこのような(へんな)評価をするのか?」などの質問がありました。参加者は、喘息などの世界中の研究を検討している人たちです。日本の「学者」は、日本で行われている治療方法や薬の評価方法を諸外国に隠しているのです。

 発表のあとでも、多くの人、特に消費者グループの女性たちが、「極めて重要な報告だった」と繰り返し言ってくれました。

 予算の論議の中で、学会で商品名を出してくれれば学会費用を負担しようという製薬会社があるが、どうすべきかと提案されました。すべての参加者は受け入れ反対だったようです。グローバル企業の典型である製薬産業相手に、科学性を対置して闘っているコクラン共同計画の姿勢を垣間見て、この組織はグローバル企業の横暴と闘う私たちのパートナーであることを確認できました。

 以上が、往復二十八時間、滞在たった三日間の主な成果でした。   (筆者は小児科医)

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