歴史的な南北共同宣言
「統一問題の自主的解決」「あらゆる分野での協力と交流の活性化」−六月十五日、平壌で韓国の金大中大統領と朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略す)の金正日総書記が南北共同宣言に正式署名した。まさに歴史の扉を開く画期的な合意である。
南北朝鮮は五十年の分断の歴史に終止符を打つための大きな一歩を踏み出した。両国国民は共同宣言を支持し、分断を超え民族の融合と統一に向かう展望が示されたことに心からの喜びを表した。
南北の和解は、朝鮮半島の軍事的緊張状態の終結を意味する。これによって北東アジアひいてはアジア全体の平和の流れが確かなものとなっていく。中国・ロシア・ASEAN(東南アジア諸国連合)各国は、「アジア全域に好ましいこと」(タイ)「最後の冷戦が終結した印象」(フィリピン)などと一様に歓迎の意を表明している。
共同宣言の背景には、金大中政権の「太陽政策」や朝鮮のASEAN地域フォーラム(ARF)参加承認などの動きがある。アジアの平和を促進し、定着させようとする努力が大きく実を結んだのだ。
口実失う戦争国家づくり
朝鮮半島の緊張緩和の前進は、日本政府が進める戦争国家づくりの不当性を誰の目にも明らかにする。政府は「テポドン」や「不審船」事件を大々的にキャンペーンし、新たな戦争動員に向けたガイドライン(日米軍事協力指針)関連法や盗聴法、「日の丸・君が代」法などを次々と成立させた。朝鮮を敵視し、「北の脅威」を煽ることで強行されてきたのが、戦争国家づくりのための一連の法体系の整備であった。
しかし、南北首脳会談の劇的成功で、こうした日本政府の政策が全くの時代錯誤であることが明確になった。対話と信頼関係の構築こそ、紛争を防止し平和を確固としたものにする道である。会談は、韓国と朝鮮(金正日総書記)が対話と交渉のできる関係に入ったことを強く世界に印象づけた。日本政府が今後も朝鮮敵視・戦争国家づくりを続けるなら、平和と共存に向かう二十一世紀のアジアの歴史の流れから完全に取り残されてしまうことは必至だ。
ともに生きるアジアへ
政府の軍拡・派兵拡大路線を根本から転換させる可能性が今、大きく開かれている。南北の和解とアジアの緊張緩和の進展によって、米軍のアジア十万人体制と在韓・在日米軍基地の存在を正当化できる根拠はどこにもなくなる。「周辺有事」などというガイドラインの想定そのものが、軍事的緊張を引き起こし、南北統一とアジアの平和に対する最大の妨害行為となることがはっきりした。沖縄・名護への新基地建設が時代に逆行する愚かな計画であることも改めて証明された。
日本政府にはさらに、日朝国交正常化交渉の再開が待ったなしの課題としてつきつけられる。その前提は、植民地支配に対する謝罪と補償の実行だ。政府がこれを拒み続ければ、日本批判は南北双方の国民に共通の声となって燃え広がるにちがいない。
歴史の歩みは戦争国家づくりに破産を宣告した。その歩みに確信をもって平和・平等・互恵のアジアをつくり上げていこう。(六月十八日)