2000年07月21日発行649号

【アパルトヘイトの債務と闘うジュビリー南ア 強者に対抗し連帯のグローバル化を】

 世界的な債務帳消し運動の先頭に立つ“南”の国々のジュビリー。その一つ、ジュビリー二〇〇〇南アフリカも、民主化後の南アのさまざまな課題に立ち向かいながら多彩な活動を展開している。

生活改善妨げる債務

 アパルトヘイト支配から解放された南アがまず直面したのは、投資引き上げだった。ジュビリー南ア事務局のクラース牧師は語る。「公正な社会を築くには、神の教えを説くだけではなく経済の分野でオルタナティブを指し示し、それを人々に理解してもらう必要がありました」。一九九六年、キリスト教団体が集まってジュビリー二〇〇〇の運動を立ち上げた。

 最初に手がけたのは教会指導者との接触だ。プログラム・コーディネーターのパトリシア(パット)さんは振り返る。「礼拝や聖書の勉強会でジュビリーを取り上げてもらいました。人々は初めはどこか遠い世界の話だと思っていますが、日々の生活と債務の問題がどんなに深く結びついているかを伝えていくと、ジュビリー運動の大切さが分かってくれます」

 南ア政府はアパルトヘイト時代から引き継いだ対外債務を今も忠実に返済し続けている。「政府にとって債務問題とは、債権国との関係を損ねてはならないという問題でしかない」(クラース牧師)。そのしわ寄せは、教育や医療予算の削減となって人々の生活水準の向上を妨げている。「教育の無償化という公約がありました。しかし、債務の支払いを優先しているため、教育予算は必ずしも増えていない。病院も建物は急増していますが、どこも財源不足です。政府は金がない、金がないと言いますが、債務返済には十分に金を回しているのです」とクラース牧師は力説する。「対外的には現政府は南アの中の“二つの国”つまり貧困と富のうち、富を持つ少数者を代表しているにすぎません」

 こうした問題を語る中で、人々はジュビリーのめざすものを理解していく。ジュビリー運動は、教会関係者だけでなく労働者や青年・学生、女性、農民、地方自治体など南ア社会の広範な階層に共鳴を広げている。

グローバルに考えローカルに行動

 「日本の若い人の主な関心事は消費や娯楽だということですが、南アも同じです」と前置きしてパットさんはこんな話を紹介した。「若者たちの間ではナイキのシューズをはいてないと仲間外れにされるんです。でも、ナイキの製品が作られる中でどんなことが起きているか、それを語っていけば、彼らも問題に気づき始めます」。ジュビリー運動はキャンパス内にも広がりつつある。「大学や専門学校を出ても仕事に就けない卒業生の団体があります。そこでも、職がないのはなぜか、政府の雇用政策が悪いというだけでなくもっと大きな経済的構図の中で考えようと話し合っている。すると債務の問題が浮かび上がってきます」

 沖縄サミットはジュビリー南アにとっても闘いの舞台となる。だが、それは沖縄現地に行くことだけに限らない、とクラース牧師は言う。「ワシントンでIMF(国際通貨基金)・世界銀行の会合が開かれた四月、南アではケープタウンにある国会に向けて自治体の民営化に反対するデモをやりました。今回も国際的にインパクトのある行動を国内で行う計画です」。グローバルに考え、ローカルに行動する−それがジュビリーの活動スタイルだ。

 「強者たちのグローバリゼーションに対抗して私たちの連帯のグローバル化を」(クラース牧師)「日本と南アは抱える問題は違うかもしれないが、交流と連帯を深め、ジュビリー運動を強めていきましょう」(パットさん)。二人が日本の仲間たちにあてたメッセージである。

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