2000年08月18日発行653号

【主張 動き出したアジアの平和 行きづまる戦争国家路線】

アジアに平和のうねり

 この八月二十五日で周辺事態(戦争動員)法は施行一年目を迎える。政府は戦争国家体制づくりを進めているが、一年前には誰も予想しなかったアジアの平和へのうねりが戦争国家阻止の展望をかつてなく拡大している。

 七月二十七日、アジア太平洋地域の安全保障問題を協議する対話機構―東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)に朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略)が初めて参加した。議長声明では、南北首脳会談を歓迎し、対話・協力の進展と信頼醸成措置の強化が確認された。ARFに前後して、南北・日朝・米朝などどれも「史上初」の外相会談が実現。朝鮮との国交樹立はフィリピン(7 / 12)からさらにカナダ、ニュージーランドへと拡大しようとしている。

 六月十五日の南北首脳会談以降、朝鮮半島と東アジア全域におよぶ平和と緊張緩和への劇的な展開は、あともどりしえない奔流となった。八月十五日、南北離散家族の再会は再び朝鮮半島に世界の注目を集め、その流れを確信させるに違いない。

孤立する日本政府

 朝鮮半島とアジアの平和の流れにうろたえているのが日米両政府だ。

 ARFの場でも、NMD(米本土ミサイル防衛)やTMD(戦域ミサイル防衛)計画に対する批判が続出し、米国は弁明に終始した。米軍東アジア十万人体制の見直しが浮上し、韓国でも米軍地位協定改定や米軍撤退の要求がかつてない規模で噴出し始めた。

 日米新ガイドライン(軍事協力指針)や周辺事態法の強行、大軍拡予算、新基地建設にいたるまで、「北朝鮮の脅威」を口実に進めてきた日本政府の戦争国家路線は根底から揺さぶられている。

 七月二十六日の日朝外相会談では「日朝間の過去を清算し、新たな善隣友好関係を樹立する」(共同文書)として、ついに前提なしに国交交渉再開へ踏み出さざるを得なくなった。「拉致(らち)問題」「ミサイル問題」を持ち出して交渉を遅らせてきた手法はもはや取りえない。

 追い込まれた政府は、防衛白書(7 / 28)で新たな「脅威」として突然「中国の弾道ミサイル」を記述。この苦し紛れの対応は、ただちに「TMDのための新たな言い訳」(8 / 4人民日報)と中国からの厳しい批判をつきつけられた。日本だけが歴史に逆行する戦争国家路線を続けることなど決してできないのである。

地域から戦争協力拒否

 七月二十五日、政府は「周辺事態法九条(地方自治体・民間の協力)の解説」を発表した。折しも九月三日の東京での自衛隊治安出動訓練を突破口に、あくまで自治体・民間に戦争協力を強要しようとの狙いを示すものだ。

 だが、この「解説」も、昨年七月の「案」公表から一年以上たなざらしにされた上、何ら強制力を持たないという基本性格を変更することはできなかった。住民の要請と追及、二百を超える自治体決議、そして何よりアジアの緊張緩和の力が、時代錯誤の戦争協力強制を阻んでいる。

 地域から自治体の協力拒否を求めよう。自衛隊治安出動訓練に反対し、誰もがともに生きられる平和な地域づくりを進めよう。(八月六日)

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