2001年02月23日発行678号

【KSD汚職事件の真相 外国人労働者を食いものにする 「技能実習制度」問題が核心】

 自民党が、財団法人・ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)をめぐる汚職事件で揺れている。KSD会員(中小企業経営者)を本人に無断で入党したことにしたり、二十億円もの大金が自民党への政治献金などに使われたというものだ。中小企業経営者から共済掛け金として集めた資金が流用されたのであり、事件の被害者は中小企業経営者という構図になる。

 だが、被害者はそれだけではない。KSD事件の中心には、外国人労働者を無権利の低賃金労働力として活用することを狙った「技能実習制度」の問題がある。

アイム・ジャパン設立

 外国人労働者を対象とする「技能実習制度」は九三年四月にスタートした。これは、受け入れ団体で研修をおこなった後、国の技能検定試験に合格すると、一定期間技能実習生として日本での就労が認められる制度だ。

 その受け入れ団体として古関忠男・KSD前理事長が設立したのが「財団法人・中小企業国際人材育成事業団」(通称アイム・ジャパン)だ。アイム・ジャパンの設立は、KSDのカネと票を背景に結成された「中小企業経営問題議員連盟」(幹事長・村上正邦参議院議員)の強い働きかけで実現した。

 アイム・ジャパンは、インドネシア労働省と提携し、インドネシアの青年たちを日本に送り込んだ。入国前後に日本語講習をおこなったあと、青年たちを「研修生」として会員企業に受け渡す。青年たちは、入国一年後に国の技能検定試験に合格すると、「研修生」から「技能実習生」に移行することになる。

 当初二年だった滞在期間は九七年四月から三年に延長された。期間延長を受けて、技能実習への移行者は九七年には六千三百人、九八年には一万三千人と急増した。この延長問題で活躍したのが、KSDのお抱え議員だった小山孝雄参議院議員だ。

 技能実習の対象となる職種も、当初は機械加工・塗装など十七職種に限られていたが、業界の要望を受けて次々に拡大。昨年三月には農業や水産業も加わって五十九職種になった。

実習の実態は単純労働

 受け入れ団体は、その後各地の商工会などが参入し、現在では約三百五十団体に上るが、先陣を切ったアイム・ジャパンは最大手であり、これまでに約一万四千人の労働者を会員企業約千五百社にあっせんした。九九年度には約二十二億六千万円の収入をあげている。

 アイム・ジャパンの会員企業は、入会金二十万円と月会費一万円を同財団に支払うほか、研修生の研修手当として月八万円を負担することになっている。だが、そうした表向きの手当がそのまま研修生に手渡ったわけではない。手当から月額二万円を「強制貯金」し、逃げ出さないようパスポートを取り上げるといった実態が報告されている。

 配属された企業でも、さまざまな名目をつけて経費を差し引いたり、残業をさせながら残業手当を払わないなどのトラブルが相次いでいる。

 研修や技能実習の実態についても、不満の声が上がっている。市民グループが研修・実習生を対象におこなった聞き取り調査によれば、「研修先でおこなっている作業によって、その職種の技術を習得していると感じているか」との質問に、七一%が「感じていない」と回答。そのうち、三七%が「研修計画に沿っていない」、三二%が「単純労働だから」と答えている。結局、日本人がいやがる3K(きつい・汚い・危険)現場で低賃金でこき使われているというのが実態なのだ。

資本に都合のいい制度

 実習生は一定期限が過ぎれば自動的に帰国するので、企業にとっては退職金もいらず、福利厚生費なども最小限の支出で済む。政府にとっても、実習生として受け入れている限り、定住問題も発生しない。「技能実習制度」は、少子化・高齢化による労働力不足を「外国人労働力の活用」で乗り切りたいが、かといって外国人労働者を日本に定住させたくない政府・独占資本にとって、まことに都合のいい制度なのだ。

 アイム・ジャパンなど受け入れ団体は「研修」を名目にしているが、実際は外国人労働者を企業に紹介して儲けるブローカーのようなものだ。KSD事件を単なる贈収賄事件で終わらせてはならない。外国人労働者を食い物にする仕組みと実態こそ明らかにしなければならない。

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