2001年02月23日発行678号

ロゴ【ミリタリーウォッチング 深刻化する劣化ウラン被爆 日本製の使用済み核燃料も原料に】

 本紙六七四号でも報道されていますが、欧州全体でNATO(北大西洋条約機構)軍の劣化ウラン弾による被爆症候群が深刻化しています。

プルトニウムなど検出

 劣化ウランは、天然ウランから原爆用の高濃度ウラン235を取り出した後の残りカス(主成分はウラン238)ですが、今年に入って、原子炉の使用済み核燃料の一部も使われている証拠が見つかりました。コソボで国連調査団が回収した弾頭から微量のプルトニウムとウラン236が検出されたのです。どちらも自然界には存在せず原子炉の中でだけ作られる元素で、プルトニウムはもとよりウラン236もウラン238の十倍以上の放射能を持つ猛毒です。米軍はそれを知りながら「極微量だから影響はない」と隠していたというのです(1/20ロイター通信)。帰還兵士や現地住民に多発する健康障害の原因は劣化ウラン弾にあるという有力な証拠です。

 日本では海上自衛隊が八〇年頃、米国製機関砲の導入に伴って配備を求めましたが、「核類似兵器のイメージがあり批判をおそれ」(97年7/16毎日)てタングステン製の弾頭を使っています。しかし、九七年には、沖縄県鳥島射爆撃場で米海兵隊が千五百発の劣化ウラン弾を実射、岩国や沖縄に貯蔵してきたことが明らかになりました。海兵隊の劣化ウラン弾は撤去されたものの、空軍用は今も嘉手納基地に配備されています。

 さらに重要なことは、日本の原発の使用済み核燃料が劣化ウラン弾の原料になっている可能性があり、イラクやユーゴスラビアの子どもたちをむしばみ続けているかもしれないという事実です。使用済み核燃料は日本から欧州の再処理施設に運び込まれ再処理されていますが、その主要企業BNFL(英核燃料会社)は米国の軍需産業に原料の劣化ウランを供給している最大手の一つです。

 劣化ウラン弾の危険性は(1)標的に当たった場合、五千度以上の高熱で燃焼し微粒子となって拡散、体内に吸収され放射線を出し続けるとともに、重金属の毒性で体をむしばむ(2)標的をはずれた場合は通常弾以上に地中深く潜り、時間をかけて地下水や環境を汚染する(3)貯蔵中も自然界の百倍以上のα線、β線を出し続ける(半減期は四十五億年)−点にあります。

戦争に勝者はない

 鳥島射爆撃場やイラク、ユーゴの戦場で「放射能レベルは自然環境以下」というのは、そのほとんどが拡散済みか地下深く潜っているからに外なりません。湾岸戦争では戦車砲弾から機関銃弾まで三百五十トンもの劣化ウラン弾が使われ、ユーゴでもコソボの狭い地域に集中的に使用されました。また、貯蔵中もその放射能の危険性は無視できません。にもかかわらず、米軍は「貫通力がタングステンより一割高い。タングステンは中国が主産地で、依存するのは危険」と劣化ウランにこだわっています。しかし本当のところは、使いようのなかった厄介者・劣化ウランを「廃物利用」できる、安価に供給できるということでしょう。

 爆発しない核兵器・劣化ウラン弾の使用は、原爆投下が戦争犯罪であるのと同様、戦争犯罪です。そして、攻撃されたイラクやコソボの人々だけでなく「勝者」であったはずの米軍やNATO軍の兵士にも深刻な被害が多数出ていることは、“戦争に勝者はない”という真実を改めて明らかにしています。

 井上三佐夫

(平和と生活をむすぶ会)

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