2001年03月16日発行681号

【外務省幹部が横領した機密費の本質 野党や外国要人の買収費 国民に有害な機密費は全廃を】

 外務省の松尾克俊・前要人外国訪問支援室長の公金横領事件で表面化した官房機密費・外交機密費問題は、えひめ丸沈没事件や森首相退陣論の陰に隠れ、野党の追及も及び腰だ。

野党買収がもう一つの顔

グラフ:機密費とは click
グラフ:機密費とは

 松尾前室長は、在任中(九三年十月〜九九年八月)に合計四十六回の首相一行の外遊を担当。そのたびに官房機密費から九億円を超える公金を引き出し、競争馬やマンション購入に私的に流用した容疑で告発された。

 松尾個人の犯罪の解明は当然だが、機密費のもう一つの顔の解明こそが必要だ。

 機密費といわれるもののうち、主なものは約五十六億円の外交機密費と約十四億円の官房機密費だ。外交機密費の中から約二十億円が首相官邸に「上納」されている。その目的は、公式には「国の事務または事業を円滑に遂行するため…機動的に使用する経費」(八四年政府答弁書)とされるが、それは一体なにか。

 自民・社会・さきがけ連立政権で官房長官を務めた野坂浩賢・元議員(社会党)は、国会議員が海外視察に出かける時には三十万〜百万円をせん別として渡し、重要法案の山場には与野党(共産党を除く)の国会対策委員会幹部に五百万円ぐらい渡したことを証言している。

 つまり官房機密費のもう一つの役割は、野党幹部に金銭を渡すことによって重要法案(対決法案)への抵抗を押え込むことにある。野党自身が受け取っているとすれば、機密費追及に及び腰となるのも当然だ。

 なぜ野党を買収する必要があるのかといえば、民意に基づかない政権が、反国民的な法案を通そうとするからだ。総選挙で国民から拒否されたはずの自民党が、公明党などと連立を組むことで国会の多数を確保し、戦争動員法(周辺事態法)や盗聴法(通信傍受法)・「国旗・国歌」法(日の丸・君が代法制化)など反国民的法案の成立を強行してきた。こうした重要法案の山場では、機密費がフル「活用」されたに違いない。

 また、ある官僚が「政府に反対する住民団体への対策費は官房機密費からもらう」(1/19朝日)ともらしているように、市民運動の切り崩しにも使われている。

外国要人に対する賄賂

 外交機密費の残りの三十六億五千万円は、各国にある在外公館に割り振られている。これは、公式には「情報収集などの外交交渉や外交関係を有利に展開するために使う費用」と言われている。

 使途の一つが,外国の要人への贈答品の購入だ。額は在外公館の規模や相手の地位などによって変わるが、最高では数百万円のものもある。大使や総領事が交代した時は、赴任先の閣僚・政府高官らに絵画・陶器・漆器・時計などを贈る。

 また、日本製品を売り込んだり大規模工事を日本企業が受注できるよう、プロジェクトや入札価格の情報を入手するために、政府高官に対する賄賂(わいろ)としても使われている。その実態は闇の中だが、八四〜八五年ごろから表面化したマルコス・元フィリピン大統領への不正献金疑惑ではその一端が垣間見えた。マルコス疑惑とは、日本からの円借款による大規模プロジェクトの受注をめぐって、日本の商社がマルコスに賄賂を渡し、しかもその一部が日本の政治家に還流していたというもの。商社の活動がやり玉に上がっていたが、当時の藤田公郎・経済協力局長は「私などは現場の第一線で経済協力をやってきたので、商社の人と組んで、他の援助国の大使館や業界のグループ相手にいろいろ知恵を出しあって闘ってきた戦友だという気持ちの方が強いですね」と業界紙(国際協力情報・85年4/12号)に寄稿している。現地の大使館が商社マンと組んで競争相手を出し抜こうと賄賂攻勢をかけている様子が目に浮かんでくるではないか。

 外交機密費は、ODA(政府開発援助)とセットで、第三世界の独裁政権を支え、日本独占資本の利権を確保する役目を果たしているのだ。

機密費の使途の全面公開を

 機密費に関するNHKの世論調査によると、国民の九割が「見直すべきだ」と答えている。だが政府は、「使途の公表は行政の円滑な遂行に重大な支障をきたす」として使途の公開を拒否し、「予算額や制度に問題はない」(宮沢財務相)と見直しも拒否している。

 独占資本の利権維持に役立つのみで、国民にとって有害な機密費は全廃しなければならない。そのためにも、機密費の使途を全面公開させ、すべてを国民の前に明らかにさせなければならない。

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