2001年05月4・11日合併号688号 ロゴ:なんでも診察室

【コレステロール下げて命縮む】

 先日、「薬のチェックは命のチェック」という雑誌が届きました。NPOジップ(特定非営利法人医薬ビジランスセンター・浜六郎理事長)発行で、薬の問題を一般の方にも理解できるように編集した大変良いものです。今号のメインテーマはコレステロールでした。驚くべき内容ですのでぜひ紹介させていただきます。

 皆さんの中には、コレステロールが高いからと、コレステロールを下げる薬を飲んでいる人も多いと思います。なにしろ、日本の医学界が作った「高コレステロール」の値は220mg / dl以上です。三十歳以上では人口の三一%、四十歳以上では人口の半分ほどがこの値を越えます。これらの人に食事療法を強制したり、薬を飲ましたりできるので、この基準値は医者にも製薬会社にも大うけです。

 それではこの値は、市民にとってはどうでしょうか? 病気と死亡率が減るのでしょうか。いいえ、これより低いと死亡率が跳ね上がります。日本循環器管理研究協議会の上島氏が行った全国調査では240〜260mg / dlの人が最も寿命が長く、これらの人と比べて200〜220mg / dlの人たちは、死亡率が約一・三倍になり、160mg / dl未満の人では一・七倍になります。特に女性では二倍にもなります。大阪府八尾市住民を対象とした内藤氏らの調査でも、240〜280mg / dlの人が最も長生きしています。240〜280mg / dlと比べると、160〜200mg / dlの人は死亡率が一・三倍です。以上は薬を使わなかった場合です。

 最近、萬有製薬がスポンサーとなって行われた大規模な調査によりますと、薬でコレステロール値を下げると、220〜240mg / dlの人が最も寿命が長いのですが、200〜280mg / dlの間ではほとんど同じ死亡率です。しかし、180〜200mg / dlに下げた人は、220〜240mg / dlの人の一・四倍、180mg / dl以下の人は実に二・七倍の死亡率になっています。240mg / dl以上では、心筋梗塞や脳出血・梗塞が増えますが、低くなるとガンが増加します。220〜240mg / dlと比べると、180mg未満ではガン死亡率は三倍以上になり、総じて寿命が縮むのです。

 以上をまとめますと、日本人では200〜280mg / dlが寿命が長く、薬は不要ということになります。ただし、心筋梗塞をおこしたことのある人や狭心症の方は220〜240mg / dlが無難です。最後に、日本の基準で薬を飲むと、毎年三千億円使って、二千人以上余分に死亡させている計算になるそうです。これって、ダムや基地建設と似ていませんか?

     (筆者は小児科医)

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