2001年05月25日発行690号

ロゴ:沖縄戦後史のメロディ 海勢頭 豊
第6回『チルグワー』〜島に残る青年の肝の叫び

『チルグワー』

 1975年7月から約半年間の期間で開催された沖縄海洋博でしたが、入場者数は予想の500万人をはるかに下回る350万人にとどまり、本土大手資本ホテル以外の海洋博をあてこんだ地元のホテルや、土産店・民宿などはたちまち経営不振におちいりました。

海洋博倒産を伝える地元の新聞
写真:海洋博倒産を伝える地元の新聞

 海洋博倒産といわれるように、建設・製造・サービスなどあらゆる業種にわたって企業倒産が続出し、物価高と失業増という深刻な海洋博後遺症をもたらしたのです。

 基地経済と観光ブームの中で、みんなが浮かれて職を求めて島を捨てていきました。離島の者はまず本島・那覇に向かい、そして本土に向かって出ていく時代に、島に残って頑張る青年の気持ちを表現したのが「チルグワー」です。

 チルは沖縄芝居でもよく出てくる娘の名で、小(ぐわー)は愛称。だから鶴子ちゃんとでも呼ぶ恋人に向かって、「行かないでおくれ」と肝から叫ぶ青年の歌です。

 沖縄では昔から、肝の文化というものがありました。人の痛みを自分の痛みとして感じるとき、肝(ちむ)が苦しいと言います。復帰以降、本土の文化が入ってきて地元の文化が忘れ去られる現状が、肝苦しいのです。

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