2001年06月29日発行695号 ロゴ:なんでも診察室

【健康診察でフィリピンへ】

 現地の言葉か、少なくとも英語ができて安心してひっついていける人がいること。これが、私の海外旅行の条件です。「林さんはいつまでたっても自立しない、一人で行くべきだ」などという、もっともな批判を無視していました。

 ところで、医療問題研究会は毎年フィリピン・マニラ首都圏で就学前教育をしている「ラーニングセンター」の健康診察をしています。今年は当番が私に回ってきました。しかし、先の条件がそろわないので、なんだかんだとごねていました。そんな時、職場の友人に紹介された、カナダに語学留学に行き、ネパールにホームステイしたという活発なお嬢さんが、正月にカンボジアのおみやげをくれました。そのお返しにポール・ガランのCDを添えて誘ったところ、なんとOK! 加えて診察を支えてくれる看護婦さんも海外旅行に慣れている方がOKとなったのです。

 この健診、はじめは子ども全交の親たちと、フィリピンの子どもたちの教育と生活改善を目指す「デイケアセンター」(当時)の親との交流の一環として始まりました。その後は、入江紀夫医師や森国悦医師を中心に、医師・看護婦などがチームで行くようになり、最近は新学期の健康診察をしています。

 六年ほど前、私が最初に行った時、イーストリバーサイドという千軒ほどのスラムには水道がたった一本しかありませんでした。子どもたちの皮膚は汚れ、日本では見たことのないひどい皮膚の感染症がありました。水で洗い、消毒して抗生物質を飲むと、たった二日でずいぶん良くなりました。デイケアセンターには水道がありましたから、毎日手足を洗う習慣をつけるよう言いました。九八年、私の二回目の訪問では皮膚病はなくなっていました。住民運動で水道が何本かついたからです。

 その後の子どもたちの健康問題ではっきりしたのが、多数の歯が溶けてしまったような虫歯です。これも今の日本ではめったにお目にかかれません。この時の健診で八十三人中五十七人が明らかに虫歯を持っていました。子どもたちは主食にも事欠いているので、お菓子はほとんど食べていません。ところが、ペプシコーラを飲む姿はよく見かけます。清潔な水がなく、ペプシの方がミネラルウォーターより安いのだそうです。ペプシが関係あるとすれば、この面でも子どもたちはグローバル企業の餌食になっているわけで、その辺も調べてきたいと思っています。

    (筆者は小児科医)

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