2001年08月31日発行703号 ロゴ:沖縄戦後史のメロディ 海勢頭 豊

第19回『ニライカナイの歌』〜創作の原点はニライカナイ

『ニライカナイの歌』
写真:水平線から昇る朝日

 この連載のとりあえずの締めくくりは、私の創作の原点であるニライカナイのメロディーです。この歌は1968年頃に作ったもので、琉球の島々を思い巡りながら、小さい頃から身体に染みついていたメロディーを歌にしました。

 ニライカナイというのは、水平線の彼方にある理想郷、異界、あるいは異次元の世界というばく然とした概念です。島の人々は、自分たちが愚かなことをすればするほど、あるいは弱くなればなるほど、そのニライカナイの浄土が自分たちを包みこんでいることを実感します。例えば沖縄戦を反省する経緯の中で、そうでした。そして、再び天皇制の呪縛に浸る日本に復帰して差別を受け続けている沖縄の現実を思う時に、またニライカナイは熱くやさしく胸中に満ちてくるのです。常に自分の心をニライカナイと対峙させることで自分を客観視する。琉球の長い歴史の中で、これは沖縄の人々が失ってはいけない一番大事なものだということを、10代の頃から気づいていました。

 私の考えでは、ニライカナイは宗教ではありません。思想・哲学です。自分たちを生かすための哲学として一人ひとりが持たねばならないものであると思うのです。上に権力をつくる絶対神をまつる宗教では決してなく、横のつながり・人のつながりを基本とする共生社会を生きる為の平等の思想です。ましてや、靖国神社のように他国を侵略してなおかつ「お国のため」に「戦死」した者を神格化するような愚かな発想は、沖縄には本来ありません。

 21世紀を迎えた今、私たちはもう一度ニライカナイを見つめて本来の目標を見つけ直しアジアや世界と共生する社会を目指すべきなのです。

                 《終》

ホームページに戻る
Copyright FLAG of UNITY