2001年09月14日発行705号

【ビエケス島住民投票 “演習即時中止”選んだ島民 影響は沖縄・全世界に】

演習場即時撤去の圧勝

 カリブ海の米国自治領プエルトリコ・ビエケス島の米海軍演習場撤去の闘いは、全世界の米軍基地反対の闘いを大きく励ましている。八月二十四日、ジョーンズ米海兵隊総司令官は、ビエケス島・住民投票(7/29)での演習即時停止派の圧勝が沖縄へ波及しかねないことに深刻な懸念を表明した。

地図:ビエケスの地図。東西に伸びる島の、中央部の一部をのぞいてほとんどが軍用地(演習地)

 七月二十九日の住民投票で住民に提示された選択肢は、(1)即時、永久的な演習中止と演習場の浄化・返還(2)模擬弾使用と二〇〇三年五月一日までの演習終結、演習場の返還(3)実弾による演習継続、という三つであった。有権者約五千九百人の八〇・五%が投票し、(1)の「演習即時中止・返還」が六八%、(3)の「演習継続」が三〇%、(2)の「二〇〇三年までの演習終結」が一・七%と、圧倒的な演習ノーの意思が示された。

 この住民投票は、クリントン前政権が押しつけた不当な「住民投票」(今年十一月実施予定)の狙いを打ち砕いた。海軍の誤爆で住民が死亡した事件(九九年)を契機に一挙に盛り上がったビエケス島民の演習場の撤去闘争に対して、クリントン政権は海軍の実施する住民投票を米国議会で決定した。しかしその内容は、今回住民が選択した「演習の即時永久的中止」をあらかじめ排除し、「二〇〇三年まで演習継続」と「実弾演習の継続」のどちらかを選べというものだった。三年間演習を継続し、その間に買収工作で運動を切り崩して永久的な演習継続を狙ったものだった。

 これに対し、プエルトリコ自治政府は「演習の即時永久停止、演習場返還」という選択肢を入れた住民投票を提案。六月十二日にプエルトリコ上下両院が実施を決定した。不当な「住民投票」によってビエケス島民の総意をねじ曲げて演習場存続を狙った策動は破たんした。

窮地に陥るブッシュ政権

 六月に、ブッシュ政権は二〇〇三年五月末までに演習を終結する政策を打ち出していた。それは投票で敗れて演習場を返還するよりも、投票を中止しせめて米国側から演習終結の道筋を描いた形を残したかったからだ。

 ブッシュ政権は今回の住民投票を恐れ三十万ドルに及ぶ買収工作を行ってきた。にもかかわらず基地撤去派が圧勝した。ビエケスのセラーノ市長は「われわれは、選挙法を尊重する民主主義国家で生活している。米議会も大統領もこの結果を評価しなければならないだろう」と述べたように、即時中止を突きつけられたブッシュ政権は窮地に追い込まれている。

 今回の住民投票を「法的拘束力はない」とする米海軍は、投票結果を無視して八月に入って爆撃演習を強行した。しかしそれは、米国がプエルトリコを植民地同然に扱っていることを全世界に宣言することになった。「ならずもの国家」の烙印を自らに押すものとなり、基地撤去闘争をさらに拡大させるだけである。

沖縄への影響波及を懸念

 ビエケス島民の闘いは、米軍基地の撤去を求める沖縄や韓国など全世界の闘いを限りなく励ますものだ。

 ジョーンズ海兵隊総司令官は「米軍を追い出せという圧力がここ数年来高まっている沖縄での海兵隊の将来をとくに憂慮している」「沖縄の人々はビエケスを見ており、ここから結論を導き出すだろう」と深刻な懸念を表明した。

 ブッシュ政権は「ビエケスと沖縄は違う」と影響波及を否定する。しかし、もはや住民の意思を無視して軍隊駐留などできないことを、ビエケス島民の闘いは示している。

 

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