2001年10月12日発行709号

【ワシントン 二万五千人が報復戦争ノー 私たちの悲しみは戦争への叫びではない】

 「ウォー・イズ・ノット・ジ・アンサー(戦争は答えではない)」―九月二十九日、アメリカの首都ワシントンに二万五千人が集い、ブッシュ政権が起こそうとしている報復戦争にノーの声を上げた。人種・宗教・世代を超えて全米から駆けつけた人々は、テロの衝撃を新たな戦争の踏み台にすることは許さないと心を一つにし、「戦争ではなく正義の実現を」と訴えた。

多彩なスローガン

 行動を呼びかけたのは、インターナショナル・アンサー。アンサー(ANSWER)とは「Act Now to Stop War & End Racism(戦争をとめ人種主義を終わらせるため今こそ行動を)」の頭文字で、テロ以来強まる戦争の脅威と人種的迫害に反対して新たに結成された連合体だ。

反対行動に立ち上がったアメリカ市民  click!!
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 ANSWERの賛同団体・個人は広い範囲にわたっている。ラムゼイ・クラーク元司法長官をはじめ宗教者、学者、女性団体、死刑廃止運動団体、労働組合、学生、退役軍人、イスラム教徒、先住民など、あらゆる階層・運動の代表が名を連ねる。

 集会会場は、ホワイトハウスにほど近い「自由広場」。始まる二時間も前から貸し切りバスなどで続々と人が集まってくる。手に手に携えたプラカードのスローガンは実に多彩だ。一番目立つのは「戦争は答えではない」だが、他にも「テロリストを殺してもテロリズムはなくならない」「報復−それが子どもたちに教えたい言葉ですか」「平和は平等から生まれる」「爆弾ではなく食糧を」「移住労働者を守れ」「アラブ人であることは犯罪ではない」「私は仲間のアメリカ人を大事にするのと同じように罪のないアフガン人を大事にする」等々。中でも参加者を強く結びつけているのは、「私たちの悲しみは戦争への叫びではない」「戦争で愛する人は戻ってこない」の言葉だろう。テロの犠牲者を真に追悼する道は戦争をとめること。その思いが会場全体を包む。

私たちの名で戦争を起こすな

 正午、ANSWERニューヨークのラリー・ホルムズさんが集会の口火を切った。「これ以上、罪のない犠牲者を出してはならない。これ以上、悲しみにくれる家族を生んではならない」と呼びかける。

 中東や南アジア、中南米との連帯運動を進めてきた団体が次々と発言に立つ。「アフガン人は長年、自らの手で政府を選ぶ権利を奪われてきた。その責任は米国にもある」(アフガニスタン難民支援団体)「グアテマラ、ハイチ、パナマ、チリ−中南米の多くの国の民衆が暴力の犠牲になっている。テロリズムを奨励し、援助してきたのは米政府ではないか」(ビエケス島基地撤去闘争支援団体)

 ひときわ大きな声援で迎えられたのは、テロの当日レスキュー隊の一員として世界貿易センタービルに入り負傷したジェームズ・クリードンさん。「多くの同僚を失い、私もあやうく死ぬところだった。これだけ殺されたのだから戦争だと人は言うが、戦争は数百倍の罪なき人の死を意味する。私たちの名を使って戦争を起こすことは許さない」ときっぱり語った。

一人ひとりが自らを主張

 ステージから離れたところでは、若者たちがドラムを叩き、踊り、仮装の練習に精を出している。反戦バッジやステッカーの販売に余念のない女性たちもいる。三時間続いた集会だが、全く退屈さは感じさせないのは、参加者一人一人が思う存分自らの主張を表現できる場になっているからだろう。

 何人かに話を聞いた。メイン州から来た学生は「政府が理性のない対応をしているのが怖い。世界の他の地域に与える影響を全く考えていない。友人たちもアメリカは気が狂ったのではないかと話している」と語る。地元ワシントンから自転車で乗りつけた若者も「報復に代わる別の道を支持するために来た。アメリカ的やり方に対する問題意識と世界の人たちに対する思いやりの気持ちを高めていかないといけないと思う」。会場の片隅に座っていた年輩の夫婦は、ニューヨークからの参加。「圧倒的多数が戦争を支持している中で、ここに来れば私たちの考え方を示せると思った。短い期間でこれだけの人が集まった。今日が第一歩」と話す。

米国民の心に確実に変化が

 三時、ペンシルベニア通りを国会議事堂に向けてデモが出発する。その前に現れたのが、ブッシュ支持の一団。「裏切り者と臆病者の集会だ」「喪に服す街を騒がすな」などと野次を浴びせてきた。しかし、沿道にはそれに劣らぬ戦争反対の市民の声があった。「復讐は癒しにならない」と声をかける老人。「戦争の扉を開かないで」とプラカードを示す女の子。戦争支持が九割に上るという米国民の心にも、確実に変化が生まれつつある。

 終着点の公園。デモが終わっても解散しようとしない参加者に、主催者が「地域に戻って人々を組織しよう」と呼びかける。それに応えて、踊り続ける若者たちの間に「戦争は答えではない」「私たちANSERの行動が答え」と元気な声が何度も響き合った。

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