十月八日、「アフガニスタンの子どもを殺すな!」「報復戦争反対!」と集会・デモで声をあげてきました。戦争は老人や女性、特に子どもに多数の犠牲者を出します。家を失ったり、難民になれば劣悪な衛生状態と栄養不足におちいるうえ医療も不可能になり、爆弾被害の何倍もの死傷者を出すのが常です。
例えば、ユニセフ・アフガニスタン事務所の勝間靖氏によれば、アフガンではポリオが多くの子を襲っているのにポリオ生ワクチンは十月いっぱいで備蓄がなくなるとのことです。ポリオウイルスは口から入って腸管で繁殖し、神経に入り脊髄の運動神経などを破壊します。運動麻痺などの後遺症が残ったり、ひどい場合は死亡します。根本的な治療法はありません。衛生と栄養状態が改善され、さらにポリオワクチンによって、ヨーロッパ、それに中国や東南アジアなども含めて環太平洋の国々からは根絶しました。
一九九八年にポリオを発生している国がアフリカ・中東などに五十か国ありました。WHO(世界保健機構)はアフガニスタンやソマリアなど内戦状態にある七か国を含めて、十四流行国をターゲットとした根絶計画を推進してきました。アフガニスタンでも、困難な中で二〇〇〇年には包括的五か年計画が立てられ、過去最大のワクチンを接種し、今年もさらに多くの接種が期待されていたのです。
ところで、流行国以外の日本などでは国内だけを考えればポリオワクチンを接種する必要性はないのです。しかし、世界中の子どもたちは今もポリオワクチンを受け続けています。日本のように弱体化した生ワクチンを使っている国では、元々のポリオは発生せず、生ワクチンによるポリオだけが年間何人か発生しています。そこで、ヨーロッパやアメリカでは生ワクチンでなく死滅させたワクチンを注射することに代えつつあります。子どもたちは、流行国からの移入を防ぐために、ワクチンを受けているのです。
二〇〇五年には世界中からポリオを根絶するというWHOの計画があります。成功すれば、世界中の子どもはポリオワクチン接種を受けなくてもよくなります。しかし、今回のアフガニスタンへの攻撃はこの根絶計画も台なしにします。アフガニスタンの子どもたちはポリオの後遺症という点でも、この報復戦争を生涯恨むことになるでしょう。同時に、米英も含め世界の子どもたちも本来不要になったはずのワクチン接種をされ続け、時にはワクチンの被害をこうむらなくてはならないのです。
(筆者は小児科医)