2002年02月22日発行727号 ロゴ:なんでも診察室

【もう一つの雪印汚染】

 赤ちゃんの結核検査の一つに胃液を調べる方法があります。昨年九月はじめ、関東のある病院で、入院中の新生児にその検査をしたところ、ミルクにまじって結核菌に似た菌がうようよいました。他の新生児の胃液も同様でした。さあ大変、新生児の集団結核感染なら大事件です。その病院はパニックに陥ったと思われます。

 十月に入り、同じ事件が関西の病院でも起こりました。そのことを知った複数の病院から問い合わせがあったためか、当該のミルク会社は十月五日に記者会見をしました。内容は、ミルクから無害の菌が発見された、その菌は死滅しているので大丈夫、医療関係者は結核と間違わないようにして下さいと、まるで教えてあげると言わんばかりでした。翌日の新聞各紙には、極めて小さな記事が載っただけでした。その菌はミルクに混入した結核菌と似ているが害のない菌だったと、うやむやに処理されたのです。この会社こそ、あの雪印乳業なのです。

 この時点では、菌が病気を引きおこす菌でなく本当に安全だ、とは確定されていませんでした。さらに、たとえその菌が死滅していたとしても、ミルクに菌が混入すること自体が異常です。腐った肉を売っておいて「煮込むから安全なので問題ありません」と言うようなものです。ミルクの回収もしないとのことでした。

 十月二十二日、小児科医ら約千人が加盟する大阪小児科学会の地域医療委員会が雪印乳業に質問状を送りました。原因や安全性の科学的根拠の提示を要請したものでした。回答は、菌の混入は同社の中標津(なかしべつ)工場の生産工程に原因があったと認め、多少のデータは示し、その菌の混入していないミルクへの「切り替え」を表明したものの、「汚染事件」でない、大腸菌以外の菌の混入は食品衛生法違反でない、厚生労働省も了承しているなどでした。その後も交渉が続いていた矢先に、雪印食品事件が発覚したのです。

 このミルク汚染問題では、雪印は政府と連携した対応をして、マスコミも最小限の扱いしかしませんでした。それと比べて今回の肉の事件の報道はあまりにも対照的で、赤ちゃんの健康問題より肉の詐欺の方が重要なのかと言いたくなります。

 ともかく、母乳ばかりかミルクもまた深刻な危機に瀕していることを示した事件でした。ミルクの安全性のチェック体制において、大腸菌以外の菌の混入は問題ないという法律自体問題です。雪印はもちろんすべてのミルクの安全性が点検されるべきです。

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