2002年06月21日発行743号 ロゴ:なんでも診察室

【「公共の利益」】

 外国語はまるきりの上に、日本語もひどいものだと言われる私でも、政府が使う「公共の利益」と言う言葉には笑ってしまいます。

 「公共の利益」がよく使われる例に、集団予防接種があります。集団予防接種は、健康な人にワクチンを接種することによって、その集団を流行病から守り、公共の利益を保証するという考えです。副作用による犠牲者は公共の利益のためにやむを得なかったのだからがまんしろ、というのが政府や「公共の利益」にごまかされた大部分の医療関係者や国民でした。しかし、ワクチンの副作用被害者たちはそんな考えを拒否し、正当な補償とワクチン行政の改善をめざして裁判や厚生省交渉などで闘ってこられました。

 その一つである、MMR訴訟が大阪地裁で五月十六日に結審となりました。MMRというのは、麻疹・おたふく・風疹の三種を混合したワクチンです。世界的に採用されていたこの接種法を日本でも始めたとたんに、髄膜炎など重大な副作用が約四百人に一人(群馬県医師会調べ)も出たのです。その原因は日本製おたふくワクチンでした。世界中で採用されてるおたふくワクチンでは、なんと二百五十万人に一人のみの髄膜炎発生ですから、日本製をそれに代えるべきだったのです。

 しかし、政府は副作用がめったに起こらないようなことを言って、多くの被害者が出るまで、国産ワクチンを中止しませんでした。しかも、MMRは中止になりましたが、おたふく単独では今も国産を使っています。この政策は、日本のワクチンメーカ(=ごく少数の人たち)の利益を守り、圧倒的多数の国民の利益を犠牲にするものです。

 このような反「公共の利益」ワクチン政策は、MMRだけではありません。インフルエンザワクチンやポリオワクチンもそうです。日本脳炎はもっと明確です。日本では患者発生は高齢者数人に限られ死亡者はいないのに、年間十人前後がワクチンの副作用で亡くなっています。集団接種はワクチン企業と、日本脳炎がまだ残っているアジアや中国の奥地に国民を送り込もうと考えている極一部の人たちにのみに支持される政策です。

 こんなあきれたものも「まっさお」な「公共の利益」が登場してきました。小泉内閣によれば、ごく一部のグローバル企業の利益確保のため、他国の人殺しに人的動員や土地施設を取り上げることさえも「公共の利益」だそうです。いったい子ども達にこの言葉どう教えればいいのでしょうか?

    (筆者は小児科医会)

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