2002年10月11日発行758号 ロゴ:なんでも診察室

【喘息の治療薬使用法】

 「コンコン、ヒューヒュー」―喘息の季節が訪れました。かわいがっていたウサギのジョンの毛が原因かも?と、涙の別れをした後の秋なのに「吸入したの?!」「うるさいな!」の毎日が始まりました。

 喘息の診断、予防、治療や教育などのガイドラインがイギリス・アメリカ・カナダなどから出ています。これらは、単に治療方針だけでなく医療政策を科学的な根拠に基づいて実施しようというものです。しかし、これらのガイドラインには製薬大企業などの圧力が加わります。その最たるものが日本のもので、科学をかなぐり捨てています。

 それでは、世界的なガイドラインの喘息治療薬使用法とはどんなものでしょうか。まず長期的な発作の予防法です。治療前に、発作が週二日以下で、夜間の発作が月二晩以下の場合(肺機能検査は省略、以下同じ)は、予防的な薬は使いません。次に、昼間の発作が週三〜六日、夜間発作が月三晩以上で少量の吸入ステロイドを毎日使用します。さらに、より重症の場合も、吸入ステロイドが基本で量を増やしてゆきます。他に、吸入ステロイドの代替えや、追加するものとしてインタール、テオフィリン、抗ロイコトリエン薬や効果の長いβ2刺激剤を使います。

 次に、急性の発作には、短時間の効果をもつβ2刺激剤の吸入(サクブタノールが最も良い)で対処します。日本の常識より相当大量に使います。それでも駄目なら、ステロイド剤を飲んだり注射したりします。他に、抗コリン剤の吸入や時にテオフィリンを使います。

 日本アレルギー学会というリッチな学会が作った日本唯一のガイドラインは異常です。第一に、私が批判してきた「経口抗アレルギー剤」という効かない薬が推奨されています。この種の薬は一時期、抗喘息薬全体の六割強を占めていました。喘息に効かないことを証明・発表して以後数年で二割強に減少しましたが、いまだに基本的な薬として紹介されています。

 もう一つは、テオフィリンです。これはケイレンなど重大な副作用を起こすことが多いため世界的には選択肢の後ろの方に位置付けられているのに、日本ではまだ最初から使う治療薬とされて、大量に使われています。少し前に、ある大手新聞が私の意見としてこの批判を載せたところ相当な反響がありました。「学会幹部の皆さん、みんなで嘘ついても、私たちは見破っていますよ」というサインを出し続けたいと思っています。

 追伸、ウサギのジョンは田舎の涼しい庭で、おばあちゃんに世話されて、狭いベランダ生活よりずっと幸せそうです。

    (筆者は、小児科医)

 

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