2002年11月22日発行764号

【ジョゼ・ボベさん来日講演 / グローバリズムと闘う農民 / 「農民・消費者の共闘を」】

WTOとの闘いを語るジョゼ・ボベさん(10月28日・大阪)
写真:太い口ひげを蓄えたジョゼ・ボベさんの顔写真

 欧州の反グローバリゼーション運動を象徴する存在、フランス農民同盟のジョゼ・ボべさん。一九九九年八月、南フランスの小都市で建設中のマクドナルド店を「解体」し、同年十一月には米シアトルでのWTO(世界貿易機関)閣僚会議粉砕行動の先頭に立った。ボベさんらのスローガンは「行動はローカルに。闘いはグローバル化しよう。なぜなら、希望をグローバル化するために」。

 来日したボベさんを迎えて十月二十八日大阪、二十九日東京などで開かれた講演会にはのべ二千人の聴衆が参加し、反グローバリゼーションへの関心の高まりを示した。

 ボベさんが主敵とするのは、各国の農業を破壊して多国籍企業のビジネスにゆだねようとするWTOとそれを先導する米政府。米国はWTOのルールさえ自ら破り、環境に対する援助と称して農民に補助金を支給し、ダンピング価格で輸出する。一方、WTOはEU(欧州連合)によるホルモン牛肉の輸入禁止措置に対抗し、農産物の価格が倍にはね上がる課税を決定する。これへの抗議がマクドナルド「解体」事件だった。

 ボベさんは「一九九五年のWTO設立以来、貧富の格差拡大と資本の集積が進んだ。世界で最も豊かな三人の巨大企業オーナーの収入は、最貧国四十か国六億人の国内総生産を上回っている。中国の加盟で、さらに二億五千万人の離農者が生まれるだろう。極めて非民主的な組織であるWTOが地球の、農民の、市民の未来を決定してしまうことはとうてい受け入れがたい」と訴える。

 ボベさんらが今、闘いの焦点にしているのはGMO(遺伝子組み替え食物)問題。多国籍企業の数社が特許化された種子を農民に売る。農民は自分の土地で収穫した種子をまくと特許侵害になるため、毎年企業から種子を買わなければならない。米国では、特許企業が私立探偵まで雇って、農民が収穫した種子をまいていないか調査し告発を促している。WTOは、このGMOを自由取引させようとしている。

 ボベさんは「GMOを禁止させることは、自分の畑で収穫した種子を再びそこでまくことができる、という農民にとっては極めて根本的な闘いだ」と語る。

 GMOは、健康・環境にとっても危険だ。GMO作物は除草剤に対する抵抗力を持っているため、それを食べた人間や動物に除草剤の被害が及ぶ。排他的なGMO作物は土壌を荒らし他の作物を汚染していく。一たん汚染されると自然な植物が育たなくなるという環境破壊をもたらす。

 ボベさんは「食物はみんなにかかわってくるもの。ある作物が、どこでどのように作られているのか、明確に表示される必要がある。ヨーロッパでは八〇%の人がGMO作物に反対している。農民・消費者・市民の三者が手に手を携えて共闘しよう」と呼びかけた。

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