2002年12月06日発行766号

【在日コリアンが拉致報道などで会見 放置できない嫌がらせ、暴力】

 十一月二十二日、参院議員会館で辛淑玉(シン・スゴ)さんら在日コリアンの呼びかけで「北朝鮮政権による拉致犯罪を糾弾し、真相究明を求め、在日への嫌がらせ・暴力・脅迫行為に抗議する」記者会見が開かれた。


写真:記者会見風景。背後には『許すな国家テロ 止めろ在日への暴力』

 辛さんは記者会見を開いた動機を「民族学校への嫌がらせやインターネットでの差別が続いている。ある四十代の在日女性は9・17以降、『外に犬の死骸が置かれているような気がする』と言って家を出られないでいる。日本人とともに生きられない空間が作られることは在日の私にとって放置できない」と語る。

 発言の多くは報道機関への批判。作家の金石範(キム・ソクポム)さんは「日本のマスコミは歴史健忘症、歴史を抹殺している。マスメディアは政府広報でも拉致家族の会報でもないはず。戦時中のような国民感情を作り上げたのはジャーナリズムだ。在日に降りかかる精神的な暴力に気がつかないのか」と怒りをあらわにする。同じく梁石日(ヤン・ソギル)さんは「9・11以降のアメリカの報道と同じ。拉致の一点に絞り込み、他の情勢判断ができない。『正々堂々と戦争をやる』と公言する石原都知事発言にはダンマリを決め込んでいる」と厳しく批判した。

子どもたちを迫害

 子どもへの嫌がらせも多い。「朝鮮学校に通う娘はチマチョゴリを脱ぎ集団登下校しているが、わが子を守ってほしいと言えない雰囲気だ。日本人も在日も国家権力に人権を踏みにじられている」(梁澄子―ヤン・チンジャさん)「十月五日以前だけで三百八件の被害報告がある。バスケットの親善試合で『ラチ、ラチ』とはやしながら応援している。地域のイベントで在日の子にだけお菓子が配られなかった。いたわり合えるはずの者同士が傷付け合っている」(姜誠―カン・ソンさん)など、迫害の実態が報告された。

 エッセイストの朴慶南(パク・キョンナム)さんは「民族や国籍を取り払い、怒りと苦しみを共有することが大切。子どもに『僕はなに人?』と聞かれると『あなたは東アジアの子どもよ』と答える。日本と朝鮮は争い憎むための途中ではなく仲良くなるための途中だ」と訴えた。また、田中宏・龍谷大学教授は今国会に提出される拉致被害者支援立法について「日本はいつから被害者に心優しい国家に生まれ変わったのか」と問いかけた。

 同日、アジアプレスの石丸次郎さんら十人のジャーナリストが出席して「北朝鮮報道」のあり方を考える記者会見も行われ、「日本と朝鮮半島の関係への歴史的な視点を踏まえた報道」や「在日に対する民族差別や排外意識を助長しないように充分に配慮を」、「北朝鮮問題に対する国際社会の見方もバランスよく報道すべき」などと求める「メディアへの提言」を発表した。

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