2003年02月14日発行775号 ロゴ:なんでも診察室

【インフルエンザの特効薬?】

 「この子、急に三十九度も熱が出たんです。インフルエンザかどうか心配で」に加えて、「特効薬があるのですって?」と聞かれるのが今年の特徴です。

 インフルエンザは高熱、頭痛や筋肉痛など、普通の風邪より症状が激しいことがありますが、そんなに心配するようなものではありません。マスコミによる「インフルエンザは恐い」のキャンペーンが本当に行き届いているように思います。「恐い」の根拠となったインフルエンザ脳症の多くが、実はボルタレンなどの消炎鎮痛剤による薬害でした。また、高齢者のインフルエンザによる死亡の過剰報道も怖い印象を与えました。

 こうして作り上げられた「怖い」に便乗したのがインフルエンザワクチンと治療薬です。特に今年はインフルエンザAにもBにも効き、今年から小児にも認可されたタミフルという薬が爆発的に売れました。輸入販売元の中外製薬は、昨年の二・四倍、四百四十六万人分の供給計画を立てています。それでも子ども用は売り切れ、大人用も手に入りにくくなっています。

 この人気薬はどれほど効果があるのでしょうか?まず子どもですが、一歳から十二歳までの四百五十二人を平等に二群に分けて、一方はタミフルを、他方はにせ薬を使用して比較した厳密な調査が一つあります。それによれば、タミフル群は三十七・二度以上の熱は一・八日間で一日早く下がり、咳などの症状も軽くなり、中耳炎の発生も九%減りました。逆に、嘔吐が六%程増えます。肺炎や脳炎などの合併症が防げるかどうか不明です。これは発症四十八時間以内から五日間飲んだ場合です。

 同様の大人の研究報告では、タミフルを飲むと、発熱は飲まない群の二十三時間に対して、飲むと十時間に減り、全部の症状は百三時間が七十一時間に減ります。反対に、タミフルを飲むと吐き気が七%から十七%に、嘔吐が三・四%から十三%に増えます。こちらは発症三十六時間以内から五日間の服用です。

 この成績は、確かに効果的といえます。ただし、この二つの研究の財源は、タミフルを開発したグローバル企業から出ています。

 さあ皆さんは、この薬を飲みますか? 難しい選択ですが、私は、以上のことをかいつまんで説明して、飲ませたいという方には、原則として鼻汁の検査でインフルエンザが陽性と出た時には処方します。今後、重篤な副作用が出ないかどうかを監視する必要もあります。

 ところで、いまだに危険なボルタレンなどを平気で出している医者もいます。インフルエンザなど風邪症状に対する鎮痛解熱剤はアセトアミノフェン以外を使わないことがまず大事です。

    (筆者は、小児科医)

ホームページに戻る
Copyright FLAG of UNITY