米国のブッシュ大統領は、珍言・暴言を連発することで知られている。彼の意味不明な言動はブッシズムと呼ばれ、世界中で物笑いのネタになっている。だが、ブッシュの低劣さを笑ってばかりはいられない。ブッシュ本人や彼をとりまく政権スタッフの面々は、きわめて好戦的な思想の持ち主である。世界を破滅に導く戦争中毒の集まりなのだ。
ブッシュの迷語録
ホワイトハウスはどんなところかと聞かれて「白いよ」。誕生日の感想は「少し年をとった気がする」。選挙遊説では「私は人類と魚が平和的に共存できると信じている」と意味不明なことを口走り、周囲をあわてさせた。これらはアメリカン・ジョークではない。すべてブッシュが公の場でまじめに語った発言だ。
日本でも出版されているブッシュの迷発言集
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基本的に、ブッシュは成人レベルの読み書きができない。areとisを間違えるような初歩的な文法ミスを何度もくり返している。記者会見で聞かれた質問をすべて忘れ、「君も55歳を超えるとこうなる」と開き直ったこともあった。これには同席していたシラク仏大統領(当時69歳)もあきれかえったという。
無教養なまま大統領になったブッシュは、それを補う努力もしていない。特に外国のことには関心が薄い。ブラジルの大統領に「君の国にも黒人はいるの?」と真顔で尋ねたのは有名な話だ。
知識も関心もないので、その世界観は必然的に幼稚かつ単純になる。しかも、キリスト教右派の信奉者であるブッシュは物事を善悪二元論で考える習性が染みついている。「テロリストはモノを憎む。われわれはモノを愛する」というように。
当面の敵であるイラクのフセイン大統領についてのコメントはこうだ。「一度、俺のダディを殺そうとした男なんだ」(あだ討ちかよ!)。個人的な感情で侵略戦争を正当化されてはたまらない。
このように、ブッシュはおよそリーダーの資質に欠けた人物である。親のコネで大統領にしてもらった「アホぼん」と言ってよい。だが、ブッシュのパーソナリティばかりにとらわれていると、彼の政権が持つ危険性を過小評価してしまうおそれがある。
好戦派の集まり
その昔、「みこしは軽くてパーがよい」と言った自民党幹事長がいた。では、ブッシュというみこしはどのような面々に担がれているのか。
まず副大統領のチェイニー。彼はブッシュ(父)政権の国防長官として米国を二度の戦争に導いた(パナマ侵攻と湾岸戦争)。軍需産業との結びつきも深い。「古い欧州」発言で物議をかもしたラムズフェルド国防長官は、その政治キャリアにおいて、いかなる兵器削減にも反対してきた。彼の弟子筋にあたるウォルフォビッツ国防副長官はさらに攻撃的である。「米国はテロリストと戦うのみではなく、それらを援助する国家を滅亡させねばならない」と公言したほどだ。
こうした戦争屋たちがブッシュ政権の政策を牛耳っている。彼らにはある共通点がある。「アメリカの新世紀のためのプロジェクト」(PNAC)という組織の構成員なのだ。PNACとは一九九七年に設立された政策理論集団のこと。その設立趣意書には、前述の三人を含めブッシュ政権のスタッフがずらりと名を連ねている。
米英日こそ悪の枢軸
PNACが目標とするのは、米国の軍事力で保たれた世界秩序の創出だ。彼らの認識によれば、現在の米国は突出した軍事力を持つ世界唯一の超大国である。その優越性を維持するために必要な軍事支出を政府は惜しんではならない、とPNACは提言している。米国のグローバルな利害を守り増大させるための軍事支出は米国の繁栄に貢献する、と言うわけだ。
PNACの主張に応え、ブッシュ政権は軍拡の道をひた走ってきた。軍事予算の増額、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)からの離脱、核兵器先制使用政策の検討などなど。イラクへの軍事侵攻計画はその延長線上にある。
PNACのクリストル議長は言う。「米軍のイラク侵攻は中東全体を自由な政治、社会に導く。…イラクでの親米政権樹立の政治的・戦略的報酬は巨大である」(2/7上院外交委員会)
何のことはない、戦争目的は米国の国益のため(正確にはグローバル企業の利益のため)だった。そういう手前勝手な目的でブッシュ政権はイラク民衆をなぶり殺しにしようとしているのである。
まったく危険な戦争バカと言うほかない。ブッシュのパシリ役のブレア英首相、小泉首相も同罪だ。「悪の枢軸」の名はこの三人にこそふさわしい。いや「アホの枢軸」か。
こういう連中が理由にならない理由で戦争を起こそうとしていることに、世界中から非難の大合唱が起こっている。広がる反戦平和の声は、ブッシュの好き放題を許しはしない。 (M)