2003年03月14日発行779号 ロゴ:なんでも診察室

【飲酒と心筋梗塞・痴呆】

 医療問題研究会の事務所で頻繁に研究会を開いていますが、このごろの私には、参加の動機が研究かその後の一杯飲みか、わからない時があります。最近事務所の近くに、ドイツやイギリスなどの生ビール、ワインなどを置いた若者向けの店ができて、そちらにはまっています。そこで、今回は適度のアルコールを飲んでいる人の方が、心筋梗塞と痴呆になりにくいという、うれしい話題を提供します。

 最も権威のあるニューイングランド医学誌の一月九日号に、健康なアメリカ人医療職男性三万八千七十七人を十二年間も追跡調査した結果が発表されました。ワインであれビールであれ蒸留酒であれ、週に三日以上飲んでいる人のほうが、心筋梗塞になる率が飲まない人の一・七分の一だった、しかも、一日の量がアルコール五十グラム(ビールで約千CC)以上の群でその率が一番低くかった、という夢のような結果です。

 でも、そう喜ばないでください。この共同研究者の一人が製酒会社の団体から報酬を受けており、そのせいか、ガンなど心筋梗塞以外の死亡数を調査しているはずなのに記載していません。ちなみに、九八年のACPジャーナルクラブという医学雑誌に、フィンランドの男性を調査し、ビールを最も多く飲んでいるグループでは、全体の死亡率は増加していました。

 痴呆とアルコールの関係をオランダ・ロッテルダムで調査した結果が、昨年一月にランセットという医学雑誌に載りました。この研究は、アルコールを飲んでいる人は痴呆の発生率が少ないというものです。これも、アルコールの種類によらず、三グラス(ビールで八百五十CC程度)までは色々な原因の痴呆の発生率は酒の量と共に減少し、飲まない人に比べ男では四〇%、女では八五%だったというものです。それ以上飲むと減っていません。この研究への支援は公的機関で、介入がないことが明記されています。

 注意すべきは、これらの調査結果は、単に適度の酒を飲んでいる人が心筋梗塞や痴呆になりにくいというだけです。今飲んでいない人が飲んだ方が良いかどうかはわかりません。また、いずれの調査も大柄な欧米人が対象です。私たちでは飲酒量は差し引いて考えるべきです。さらに、他の研究から飲み過ぎると死亡率や痴呆などさまざまな病気にかかる率が多いことがわかっています。     

 企業の息のかかった研究を冷静に分析した結果、その真実らしい所を参考にして、私は今夜から三百五十CCの発泡酒を三本から二本に減らす予定です。

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