2003年05月09日発行787号 ロゴ:なんでも診察室

【コレステロール低下薬】

 少し前、適度にアルコールを飲んでいる人の方が循環器病や痴呆になる人が少ないという、酒飲みへの吉報をお伝えしました。しかし、酒飲みの男に悩まされている方々は、とんでもない記事だと思われたかも知れません。そこで今回は、コレステロールが少々高くても気にしないでも良い、という男女平等?の話題をお伝えします。

 コレステロールに関して、世間では次のようなことが言われています。(1)コレステロールが高い人は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系の病気になりやすく寿命も短い (2)コレステロールを下げれば、心血管系の病気になりにくく寿命も長くなる (3)コレステロールを下げる薬を飲めば寿命ものびる。皆さんは、どう思われていますか?

 まず、コレステロール低下薬の最大の消費者である、心血管系の病気をもたない、単にコレステロールが高いだけの人について考えます。(1)日本で「高い」とされる二二○mg/dlから二八○mg/dlでは心血管系の病気は増えず、女性ではむしろ一六○mg/dl未満の方が増える。ガン死亡などを含めた寿命はコレステロールが高い方がむしろ長い (2)食事でコレステロールを下げると心疾患死亡率は下げたが寿命は伸ばさなかった (3)コレステロール低下薬でも、心疾患での死亡率は多少下げるがすべての死亡率は下げない、という事実があります。

 簡単に言うとコレステロールを下げると心血管系の病気は多少少なくなるかもしれないが、ガンなどの死亡が増え寿命は長くならない、ということになります。

 コレステロール低下薬は年間売り上げが約三千三百億円です。世界で最もよく売れた薬の一つ、三共のメバロチンというコレステロール低下薬は売り上げ一兆円を超えたといわれます。この薬は寿命を延ばす効果がないことを確定する研究論文が昨年末、アメリカ医師会雑誌に発表されました。コレステロールを下げましょうというのは、製薬会社や医者の詐欺的キャンペーンだったのです。

 ところで、すでに心血管系の病気にかかっている人の場合は、少し事情がちがってきますので、今回は省略します。

 今、心血管系の病気がない人はコレステロールの数字に怯えることはありません。コレステロール低下薬も含めて、薬の嘘を見抜くことは、自らの健康を守り、日本医学界を丸抱えしているグローバル企業との闘いの一つです。

    (筆者は、小児科医)

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