2003年06月06日発行791号

【ロンドン200万人デモの ストップ戦争連合が初来日 シャヘド・サリームさんに聞く イラク参戦は英国の恥】

 五月二十四‐五日の国際連帯集会(主催MDS―民主主義的社会主義運動)にイギリスから「ストップ戦争連合(Stop The War Coalition)」のシャヘド・サリームさんが参加した。イラク戦争反対行動の世界的な広がりをリードした英国の反戦運動の息吹を聞いた。


中学生千人が開戦に抗議

Q 二月十五日のストップ戦争連合(以下「STWC」)のロンドン二百万人デモがあれほど巨大になったのなぜですか?

A 第一には、国連安保理での議論、査察団の報告という事態の中で、世界が戦争阻止のためのクライマックスに達していたこと。英国の国会内での議論も緊迫しており、人々がデモの必要性を感じていた。戦争阻止の最後のチャンスだとみんなが感じていた。

ムスリムの組織化に活躍するシャヘド・サリームさん
写真:顔写真

 第二に、過去十四か月にわたるデモの蓄積で、人々はもっと何かできるのじゃないかという自信を持った。いろいろな団体・組織がデモに参加する状況ができており、それが大規模な参加となった。

 第三に、英国のマスコミがデモを支持し、二〜三日前からデモのルートや時間、集合場所を新聞に載せた。

 統計的にみて、英国の全世帯のうちから少なくとも一人がデモに参加した結果となっている。

Q マスメディアが「普通の人々」「プロテスト・バージン」と呼んだように、初めてのデモ参加者が多かったのは?

A 人々はこの戦争を正当化する理由について全く確信を持てなかった。マスコミからの情報とか国会での議論について非常に懐疑的になっていた。そのような感情を表す多くの横断幕やプラカードがあった。ある老婦人は「(いくら正当化しようとしても、この戦争は)依然として恥であり、依然として自分は怒っており、依然として間違い」というプラカードを背中に着けた。他にも「中産階級も戦争反対」や「たとえ戦争に勝っても正当化はできない」などがその心情を表している。

 学校の生徒たちが反戦デモに多く参加した。授業を休んでデモに参加し、そのために停学になったケースもある。イラク戦争開戦の日には、十五〜十六歳の中学生一千人がロンドン市内をデモ行進した。ロイヤル・ファミリーの通うような名門イートン校でもSTWCの反戦集会があった。

イスラム教徒が中心に

Q 四百から五百というSTWCの地方組織はどのように組織されたのですか?

200万人がロンドンの街路を埋め尽くした(2月15日)
写真:プラカードを掲げ行進する人々

A STWCの中央としては、誰でも、何人からでも支部が結成できること、自分たちでグループを作ったらぜひ報告してくれという形で、自由に地域で作ってくれという呼びかけだけを行った。地域や組織の名称の前に「STWC」というブランドを付けても構わないから、自分たちで組織を作り活動してくれと呼びかけた。

 STWCが正式に全国組織として結成される前から、社会主義労働者党など各地に平和運動グループを結成していたけれども、そういうグループは「STWC・○○」という形に名前を変えて全国連合に参加した。ロンドン郊外の伝統的には非常に保守的と思われている地域や金持ちが住む小さな町でSTWCの支部ができた例もある。

Q 地域の運動にはどういう階層の人たちが参加しているのですか?

多くのムスリムが行動に参加(2月15日・ハイドパーク)
写真:家族連れの四人。背後には人波がぎっしり

A 私の地域を例に考えると、左翼的な様々な活動に加わっていた人々が中心となって呼びかけ、一般の人々が集会などに参加していくというケースが多いのではないか。教会関係の人々が反戦運動を忠実に担っているという例もある。 ムスリム(イスラム教徒)も強力な反戦運動の担い手になっている。英国では非白人が人口の三〇%を占めている。ムスリム人口の九九%は戦争反対の立場だ。ロンドンやバーミンガムのような大都市における運動ではムスリムが中心的役割を果たした。英国全土でのムスリムの人口は三百万人。この三百万人がほぼ戦争反対といえる。

 ムスリムが英国内で、国際情勢と結びついた問題で、しかも白人の国民と一緒に行動したのは初めてのことだ。

 今回の一連の行動の中で誰が主張したわけでもなく、自然とパレスチナ問題が白人も含めた英国反戦運動に受け入れられるようになった。それは、ムスリムの人々がこの反戦運動の中心に立ち、影響力ある役割を果たしてきたからだ。今日、パレスチナ問題は反戦運動の主要な課題として認知されている。

占領と経済搾取阻止へ

Q 今後の闘いの課題について聞かせて下さい。

A 六月のエヴィアン・サミット(G8)に対して、行動を呼びかけている。できるだけ多くの人をエヴィアンに行かせるように活動している。

 また、米英の利権追求の動きへの闘いも今後の中心的課題のひとつになっている。STWCは基本的には戦争阻止のために結集した連合体だけれども、戦争が終わった今、占領阻止・占領政策阻止がスローガンになるべきだ。いまマスコミがイラク問題を報道しなくなっている中で、経済的な搾取の構造について常に英国の民衆に情報提供していかなければならないと考えている。

 STWCは、六月に活動者会議を持つ。その論議ポイントは、第一に、これまでの反戦運動を、どうやって反占領政策の運動にしていくかにある。そのためにイラクに調査団を送ることも考えている。すでに調査団を送っている日本の運動の経験を学びたい。

 論議の第二のポイントは、米英の「戦争連合」が次の戦争の目標をどこに置こうとしているのかを見定めて、戦争阻止の方向を打ち出すことだ。

Q MDSの国際連帯集会の感想を?

A 参加して元気づけられたということだ。いろいろな活動にみんなが取り組んでおり、しかも日本の国内問題だけでなく、世界に向けた視点を強く持っていることが印象的だった。今の時期に国際連帯集会を組織して、高いレベルで反戦行動を維持・発展させようという姿に、非常に励まされ、多くのことを学んだ。今後も一緒に連携して闘っていきたい。

ーありがとうございました。

  (五月二十六日) 

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