2003年07月11日発行796号 ロゴ:なんでも診察室

【劣化ウランの毒性】

 私の母は百姓で、田や畑で過酷な仕事をしながら、兄と私を育てました。小さな私は草刈り用の大きなかごの中で、春はレンゲ草、夏にはキュウリなどと遊んで育ちました。そのためかどうか、二歳まで一言もしゃべらず、いまだに言葉で苦労しています。実は、前回のSARSのお話で、「probable」を「possible」と書いていました。申し訳ありません。もちろん、趣旨は全く変わっていませんのでご了承下さい。

 こんな私ですが、仲間の協力を得て完成した抗喘息薬研究の評価が、最近のコクラン・ライブラリーという世界的に最も権威ある研究評価のデータベースに載りました。三年がかりで世界中のこの薬に関する文献を分析し、まとめたものです。もちろん、国内外の共同研究者たちが、私の書いた英文がほとんど残らないほど訂正してくれました。これは私たちがやってきた「効果なく危ない」薬批判のだめ押しの研究ですが、このたび薬批判で得た力が平和運動と直結することになりました。

 それは、医学研究として、劣化ウランの害がどこまで研究され、論文として発表されているかを調べることです。というのも、マスコミなどではさまざまな害が言われていますが、国際原子力機関(IAEA)は、医学研究を調査したが劣化ウランの「観察可能な健康への影響は予想されない」などとしています。その他、劣化ウランには放射線障害はない、湾岸戦争症候群の原因はワクチンや虫除け剤などの影響もあり、劣化ウランとの関係は不明などという、米軍の強い影響を受けているとしか思えない「権威ある」医学論文が目白押しです。

 ところが、MDS(民主主義的社会主義運動)の仲間三人で、まとめや解説でなく、劣化ウランの毒性を研究した元データに的を絞って徹底的に検討してみると、こちらがびっくりするほど劣化ウランの害が明確になりました。劣化ウランに直接関係する研究は少なく、しかも大部分が軍関係者の研究者にもかかわらず、具体的なデータはほとんどその毒性を証明するものばかりでした。環境破壊に関しては、爆撃に近いところでは土壌汚染が明らかで、水や大気汚染は苔や樹木汚染という形で証明されていました。動物や人体組織の実験では発ガン性、生殖や中枢神経への害も示され、人の観察でも染色体異常や精神神経的能力、遺伝子の障害をもたらしていることがはっきりしました。

 アフガニスタン国際戦犯民衆法廷の公聴会には、劣化ウラン研究者の方々がすばらしい報告をされていますが、その隙間を埋めるものとして私たちの研究が役立てば幸いかと思っています。   (筆者は小児科医)

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