ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2003年08月01日発行799号

第14回『人権委員会におけるNGO(4)』

 4月10日、国連人権委員会における議題「女性の権利の統合−−女性に対する暴力」において、筆者はIFOR(国際友和会)・JFOR(日本友和会)・AWHRC(アジア女性人権評議会)の3つのNGOのジョイント発言として、次のように述べた。女性の人権のもっとも残酷な事例が戦争の武器としての性暴力の利用である。2003年クマラスワミ報告書は日本軍性奴隷制問題に焦点をあてている。1991年に金学順さんが被害者としてカムアウトして以来、調査が始まり、クマラスワミ報告者は日本と韓国を訪れて調査し、報告書をまとめた。クマラスワミ報告者の批判は、日本政府の法的責任に向けられている。しかし、日本政府は法的責任をとっていないので、2003年報告書にも記載されることになった。これまでのクマラスワミ諸報告や1998年のマクドウーガル報告書など、人権委員会でも 人権小委員会でも、日本政府の法的責任が確認されてきたのに、日本政府はいまだに責任を果たしていない。2003年のILO条約適用専門家委員会報告書も、1996年以来4度目の決定で、性奴隷制が強制労働条約違反であったことを指摘し、日本政府が被害者補償をするよう促している。日本の国会では3つの野党が被害者補償法案を提案している。多くの女性NGOも、「アジア女性基金」を拒否している被害者がこの法案を支持しているし、2003年2月26日、韓国国会も法案支持決議を採択している。

 続いて、申恵秀(韓国女性団体連合)が、次のように述べた。クマラスワミ報告書を歓迎する、昨日ソウルでは553回目の水曜デモが行われた、被害女性たちが日本大使館前で抗議行動している、日本がなぜ戦争犯罪や人道に対する罪を解決できないのか不思議である、これは法律問題というよりも良心の問題である、日本は国際刑事裁判所規程も女性差別撤廃条約選択議定書も批准していない、ソウルの水曜デモは被害者が生きている限り10年以上続くであろうし、たとえ被害女性がすべて亡くなってもその精神は若者の心に生き続けるだろう。

 次に、宋恵淑(リベレーション)が、次のように述べた。クマラスワミ報告者が活動してきた1994年以来、性奴隷制問題では被害者へのスティグマではなく、犯行者の恥に焦点があたるようになり、日本政府が性奴隷制問題の解決をしないことが問題となってきた、「アジア女性基金」が解決にならないことは社会権委員会も指摘している、名誉と尊厳の回復を求める被害者は今もトラウマに悩まされている、世界の戦時性奴隷制の再発防止のためにも解決が必要である。

 さらに、徐忠彦(国際民主法律家協会)が、次のように述べた。クマラスワミ報告書を歓迎する、生存被害者はいまだに心身のリハビリや補償を受けていない、日本政府は膨大な資料を隠匿したままであり、日本政府が法的責任を認めないために、強制連行被害者の子孫である在日朝鮮人に対する差別が続いている、しかも被害は少女に集中している。

 最後に、全中国女性連盟代表が、次のように述べた。「慰安婦」問題を忘れることはできない、もっとも野蛮な人権侵害であり、生存者は今も苦しんでいるのに、日本政府の態度はすべてのアジア女性にとって許すことができない、日本政府は姿勢を改めて、国家責任をとるべきである。

 以上のように、2003年の国連人権委員会では、例年よりも多く、7つのNGOによる5つの発言がなされた。クマラスワミ最終報告書が出たことが大きい。

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