2003年08月15日発行801号 ロゴ:なんでも診察室

【日焼け止めクリーム】

 ながーい、ながーい梅雨が明けて、やっと夏らしい天気になりました。子どもたちは、プールや海水浴を満喫する季節です。

 ところで、このごろの子どもはうっかり太陽の光を受けられません。「紫外線は有害、ガンになる」というキャンペーンで脅かされるからです。

 神戸大学皮膚科の市橋氏は日光浴をやめろと言っていますが、以前、日本では紫外線不足が問題になった時期がありました。冬の三か月健診で、頭の骨が柔らかくぺこぺこへこむ子どもを見かけました。暗い屋根裏の部屋で住んでおり、ほとんど日光に当たらないため、ビタミンDが不足し、骨の発育が遅れたのでした。適当に日光に当てた方がよい根拠の一つです。また、アトピー性皮膚炎には適当な紫外線が当たる方が良い人も多く、治療にも使われています。

 逆に、それほど日光が恐いのでしょうか? 同じく神戸大学皮膚科の鈴木氏は、日本の南部が北部より非黒色皮膚癌の発生率が高いから、日光紫外線照射線量は日本における皮膚癌率と相関していると、報告しています。新潟から、一九九八年までの二十五年間に皮膚癌が増えていることが報告されていますが、主に七十歳以上の高齢者の話です。反対に、山梨医科大学は十六年間で増加傾向なしとしています。ガンの登録では最も信頼できるデータを持つ大阪府下の一九八一年から九〇年の記録では、ガンの増加はなく、「日光紫外線増強による影響は未だ見られなかった」(大阪大学皮膚科富田氏)としています。

 日本においては、皮膚癌が増加したという明確なデータがないことがわかります。まして、乳幼児の日光浴との関係については全く不明です。

 日光浴反対の人たちの主張は、「過度の日焼けは皮膚癌を増加させるとの報告がみられる」から、「日焼け止めクリームの積極的な使用を提案」(東京医科大田中氏)するところまで飛び跳ねています。カネボウさん、資生堂さんうれしいですよね。

 ところで「日焼け止めクリーム」には、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。前者は皮膚刺激が強く、アレルギーをおこし、発ガン性が報告されているなどの問題があります。後者は酸化亜鉛・酸化チタンが主ですが、その他にも合成化合物が使われています。かえって皮膚癌が増えるかも知れないのです。環境破壊を逆手にとって、親を脅かし、利益を上げるのが企業戦略では困ったものです。

 そういえば、高校球児は真っ黒に日焼けしていますが、そのうち、真っ白な顔の高校球児が「僕たち○○の日焼けクリームを塗っています」などと宣伝するかも知れませんね。

 (筆者は、小児科医)

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