ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2003年09月12日発行804号

第19回『人権促進保護小委員会におけるNGO(3)』

 2003年の人権促進保護小委員会(以下「人権小委員会」)55会期には世界各地の様々な情報が寄せられた。世界中のNGOが参加したり、書面で報告したり、特別報告者が報告書を提出したり、専門委員自身が情報を持ち寄ったりした。そうした中、日本関連NGOは精力的な活動をした。その全体を把握しているわけではないが、日本軍性奴隷制問題に取組んできたNGOの活動を中心に紹介しておこう。

 第1に、文書提出である。日本友和会は、日本軍による戦時性的被害女性問題解決法案を紹介する文書を提出して受理された。アジア女性資料センターは、VAWW NETが主催して2000年に東京で開かれた女性国際戦犯法廷を報告し、その判決に含まれる法的原則をもとに作成している被害者補償ガイドラインを紹介する文書を提出して受理された。

 文書提出は誰でもできるものではない。国連経済社会理事会との協議資格を認められたNGO(いわゆる国連NGO)は、人権委員会や人権小委員会に事前に手続きに従って文書を提出することができる。受理されたNGO文書は正式文書として国連マーク入りの印刷物となり、専門委員や各国政府代表など委員会参加者に配布される。

 日本友和会は国際友和会などとともに、日本軍性奴隷制の解決を求めて数年にわたって多くの文書を提出してきた実績をもつ。アジア女性資料センターは2002年の人権小委員会に初めて参加・発言するとともに、文書も2年続けて提出している。

 また、反差別国際運動は、朝鮮学校差別問題をこれまで多くの国際人権機関で取り上げてきた。人権委員会、人権小委員会、少数者作業部会にも報告されたが、一連の条約機関である人種差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、自由権委員会、社会権委員会において審議され、数々の是正勧告が出されているのに、日本政府は差別政策を是正していないと報告した。

 第2に、発言である。NGOは1つの議題について1回発言できる。今回はNGOの発言時間は7分であった。7分という短い時間ながら、専門委員や各国政府代表がいる場で発言できる。これは日本国内にいてはほとんど得ることができないチャンスである。

 日本軍性奴隷制に関連するNGO発言は6回なされた。

 7月29日、アジア女性資料センターは、イギリス軍に強姦されてきた多数のケニア女性が告発運動を始めたことを取り上げて、組織的強姦は大規模になりやすく、犯行方法や被害状況は類似したものとなる。日本軍性奴隷制被害者のカムアウトに50年を要したが、日本政府は法的責任を否定し、情報公開を拒否し、責任者を処罰せず、歴史教科書に正確な事実を記さず、責任逃れを続けている。被害者は60年たった今でも被害を受け続けているとして、提出文書で紹介した被害者補償ガイドラインに注意を喚起した。ケニアの女性についても日本軍の被害女性についても、国家の法的責任、謝罪、補償、責任者処罰が必要であるとした。

 7月30日、日本友和会は、ウィーン世界人権会議から10年たち、実行犯は処罰され、責任を問われるべきだという国際法の議論は深められたが、国内における司法的解決がなされていないので、戦時性暴力問題は解決していない。日本でも不処罰が続き、補償がなされていないとして、戦時性的被害女性問題解決法案を野党が国会に上程していることを紹介し、人権高等弁務官事務所報告書において各国国内法による解決方法を研究するよう要請した。

 

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