ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2003年10月10日発行808号

第22回『人権促進保護小委員会におけるNGO(6)』

 人権促進保護小委員会(以下「人権小委員会」)では、前回までに紹介した戦時組織的強姦・性奴隷制問題だけではなく、実に多くの人権問題が報告され、議論されている。日本関連NGOの発言を紹介しておこう。

 8月6日、日弁連(中西啓)は、日弁連の長年の努力にもかかわらず、日本の裁判所は国際法を正しく適用していないとした。例えば、公職選挙法における戸別訪問禁止条項は自由権規約違反であるが、最高裁は何らの根拠も示さずに、戸別訪問禁止の処罰規定は自由権規約に違反しないという結論だけを示した。外国人登録法の指紋押捺義務訴訟でも、最高裁は何の理由も示さず、請求を棄却した。このように日本では国際法の履行がまったく不適切な状態である。日本が自由権規約選択議定書を批准すれば、個人通報が可能となり、事態の改善につながる。選択議定書その他の議定書の批准が必要である、と発言した。

 8月8日、アジア女性人権評議会(前田朗)は、日本における民族学校に対する差別について、これまで6年間発言してきたとしたうえで、日本政府は外国人学校の大学受験資格を差別してきたが、今年になって「改善案」を出した。それによると、外国人学校のうちアメリカやイギリスの学校だけが救済される。これに対する強い批判を受けて、日本政府は水曜日に新しい案を出したが、それは朝鮮学校だけを差別し、ほかは優遇する案である。これは政治的な案であり、人権促進にそぐわない。人権小委員会は政府に、少数者の教育機会の平等を求めてほしい、と発言した。

 8月12日、国際民主法律家協会(塩川頼男)は、「日本からの民の声」には27件の事例が報告されているが、日本国内では解決困難であり、国際協力が必要である。われわれは小額ではあるが、国連の奴隷制基金、先住民基金、拷問基金に貢献してきた。基金への出資が増えれば、人権問題の解決につながる。「人権と大量破壊兵器」報告書は重要である。劣化ウラン弾のような人権侵害兵器についての研究を続けるべきである。

 8月12日、アジア女性人権評議会(柴田朋)は、アジアにおける民族的少数者の女性に対する差別について2つの例を紹介したい。ネパールの20%の「ダリット」というカースト集団の女性は、人生のどの領域でも差別を受けている。教育、健康、土地所有権も。人身売買その他の強姦被害も受ける。1994年、「フェミニスト・ダリット組織」を立ち上げた。日本の植民地支配時代の強制連行被害者の子孫である在日朝鮮人に対するチマ・チョゴリ事件は、ほとんど犯人が検挙されない。警官の人権教育が必要である。人権教育とは、「抑圧された者から学ぶことを学ぶこと」である、と発言した。

 同様に世界各地から集まった多くのNGOが人権侵害事例を報告したり、政府が報告したり、特別報告者や人権賞委員も具体的事実を持ち寄って、議論を深めていく。以前よりも理論的研究に重点を置くようになったが、それでも多数の事例が報告されている。

 朝鮮学校に対する受験資格差別問題はこれまでも人権委員会や人権小委員会に報告しながら改善を求めてきた。文部科学省の差別的姿勢は変わらないが、2003年夏から秋に掛けて各地の国立大学が自主的に差別是正に向けて動き始めた。国内における運動と国際人権活動の両輪が効果を発揮し始めた一例である。

 他方、「人権と大量破壊兵器」報告書は、NGOの要請にもかかわらず、継続されない方向になっている。アフガニスタンやイラクなどでの被害立証をもとに改めて重大人権問題であることをアピールしていかなくてはならないだろう。

 

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