2003年11月28日発行815号

「ブッシュ有罪」へ第8次調査(3)

【新婚夫妻に深夜の爆撃 タリバン兵を狙って民間住宅を破壊】

 タリバン軍は米軍と闘う意思も闘う能力も持っていなかった。一方的な空爆の繰り返しに、タリバン兵は逃げ惑っていた。空爆開始一週間足らずで軍事目標を破壊し尽くし、攻撃目標を捜し求めていた米軍は、逃げ回るタリバン兵の掃討を口実に民間地域にも平気で爆弾を落としたのだ。(勝井)

 米軍によるアフガン攻撃やイラク攻撃は、ブッシュの言う「先制攻撃」ではない。それを言い表す言葉は、「なぶり殺し」以外にはない。なぜなら、タリバン軍は米軍と闘う意思も闘う能力も持っていなかったからだ。

逃げ回っていたタリバン兵

 米軍はアフガン攻撃を開始する理由として、「タリバン政権がウサマ・ビンラディンの引き渡しを拒否したからだ」と主張している。しかし、これは全くのウソだ。

 タリバン政権の一貫した態度は、「ビンラディン氏が9・11事件の犯人であることの証拠を示せば、引き渡す用意がある」というものだった。この提案に証拠も示さず、「交渉も議論も必要ない」と一方的に拒否したのは米国の方だった。

 空爆開始後も、タリバン側はこの姿勢を貫いている。

 米空母の大尉が「アフガン側が航空機を使用したことはない」と正直に報告している。航空部隊を持たないタリバン軍が反撃できるのは、対空砲だけだった。その対空砲の応戦も、「米軍機の飛行高度が非常に高く、われわれの攻撃が届かない」(タリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使)状態だった。

 反撃する術(すべ)のないタリバン兵が、空から襲ってくる爆撃の嵐を避けるために残された道は、軍事施設から出てひたすら逃げ回ることだった。調査団が被害者から聞いた証言でも、逃げ惑うタリバン兵の姿が浮き彫りになる。

新しいベッドを直撃

 2001年11月8日の午後11時半頃、カブール市内のカルテ・パルワン地区に米軍は爆弾を落とした。サイード・アクバルさんとザーラシュトさん夫妻にとって、その日は結婚45日目に当たり、注文していた新しいベッドが到着した日だった。爆撃は二人が寝ていた部屋に落ちた。

カブール市内で娘夫婦を殺されたラヘマさん(手前)
写真:新婚夫婦がアメリカの爆撃で殺された。悲しむ母の様子

 ザーラシュトさんの母親ラヘマさんは、翌朝4時に現場に駆けつけた。

 「コンクリートの天井もベッドも完全に壊れていた。夫の顔は吹っ飛び、内臓も飛び出していた。娘の顔にも火傷(やけど)のあとがあった」

 娘夫妻の惨状を語るラヘマさんは、フランスに留学したこともある教師だった。娘のザーラシュトさんも、カブール大学を卒業して教師になった。女性から教育の機会を奪ったタリバン政権下で、自宅で隠れて高校生を教えていたという。ラヘマさんは瓦れきの下から取り出した娘の肖像画を示した。「この画が発しているメッセージは『PEACE』です。教育を受けたすべての人に言いたい。同じことを繰り返すな。われわれと同じ人間を生み出すな、と」

軍事目標以外を空爆

 カルテ・パルワン地区は、タリバンの軍事施設から遠く離れた全くの民間住宅地域だった。近くには高校もある。

 ラヘマさんの夫が怒って、米軍に抗議に行ったが、米軍は「タリバンを狙った。誤爆だ」と説明したという。

 近所の人の話によると、タリバン兵が夜間に学校やモスクに隠れていたという。娘夫妻の家の裏手にはタリバンの司令官が住んでいたとも聞いた。

 闘う意思のないタリバン兵が逃げ隠れする場所を狙って、米軍は空爆した。そこは、軍事目標とは決して言えない場所だ。(続く)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS