2004年03月26日発行832号

【国際人道法さえ戦争の道具 有事関連法に利用する小泉 無防備地域宣言で対抗】

「人道」の名で武力行使

 政府は3月9日、国際的な武力紛争と内戦の際の文民など非戦闘員の保護を定めたジュネーブ諸条約第1追加議定書・第2追加議定書批准承認案件を国会に提出した。また、「追加議定書の実施に必要な国内措置」の名目で(1)捕虜取り扱い法案(2)国際人道法の重大な違反行為処罰法案(3)国民保護法案―を有事関連法案として提出した。

 どれも追加議定書の、政府にとって都合の良い部分だけをつまみ食いした、戦争遂行のための法案となっている。

 「捕虜取り扱い法案」は、「捕虜等の取り扱いに関し必要な事項を定め、自衛隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるようにする」ことを目的に上げている。条文は183条にのぼり、捕虜の拘束、捕虜への懲罰などを事細かに規定。そして、拘束から抑留、送還にいたるすべての過程で、個々の自衛官の判断による武器使用を認めている。

 日本はこれまで、戦時捕虜に関する法律を持たなかった。平和憲法の下で戦争と武力を放棄した以上、捕虜など生まれるはずがないからだ。同法案は、捕虜を拘束・抑留し殺傷する自衛隊の行動=戦争を行うことを公言するものだ。

 「国際人道法の重大な違反行為処罰法案」も同様で、処罰の対象となる戦争犯罪を明示し、戦争に備えることを目的としている。

 世界の民衆は、戦争違法化と民間人保護を目指して国際法を発展させてきた。その成果であるジュネーブ条約を、「戦争屋」の小泉政権は、自衛隊をグローバル資本の利益を守る侵略軍に変えるルール作りに利用している。

追加議定書をつまみ食い

 「国民保護法案」も、追加議定書に定められた本来の「文民保護」とは全く無縁だ。

 たとえば、第1追加議定書第58条。「攻撃の影響に対する予防措置」として、文民と民用物を軍事目標の近くから移動させること、人口集中地域への軍事目標設置を回避することを締約国に義務付けている。沖縄の米軍・自衛隊基地はいうまでもなく、全国各地の自衛艦の母港や駐屯地など市街地に近い軍事目標は数多く存在する。

 政府は、「国民保護法案」を含む有事法制の必要性について、「他国からの武力攻撃への備え」と繰り返してきた。仮にその言葉どおりとすれば、議定書が義務付ける「予防措置」に対応する立法がなされなければならない。だがこれらの事項は、法案では一切ふれられていない。議定書の「予防措置」が「自由な軍事行動」を束縛するからだ。

 政府が目指している「国民保護」とは、ジュネーブ条約の精神に基づく民間人保護などではない。あくまで、自衛隊・米軍の自由な活動を最優先させるために、自治体・赤十字・マスコミ・地域住民などを統制下に置くことなのだ。

ジュネーブ条約を平和実現の手段に

 戦争違法化への人類の努力の成果であるジュネーブ諸条約の承認を、国家による戦争の道具に利用させるのか、それとも民衆による平和実現の手段として実効性を持たせるのか―その闘いが「無防備地域宣言」運動だ。

 ジュネーブ条約第1追加議定書第59条は、敵対行動に使用される施設・兵員を置かないことなどを条件(注)に「無防備地域」を宣言することを認め、その地域への攻撃を禁じている。無防備地域宣言のための条例を作らせることは、地域ぐるみで軍事関連施設を一掃することであり、他国を侵略し民衆を殺戮する戦争政策の拒否である。それは、小泉による戦争国家づくりを押しとどめ、戦争を許さない世界を築く一歩となる。

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「無防備地域」の条件

(1)すべての戦闘員ならびに移動兵器および移動軍用施設が撤去されていること

(2)固定した軍用の施設または造営物が敵対的な目的に使用されていないこと

(3)当局または住民により敵対行為が行われていないこと(4)軍事行動を支援する活動が行われていないこと

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