ロゴ:劣化ウランの毒性を告発する 2004年04月02日発行833号

【劣化ウランの毒性を告発する(8) 同じ調査で異なる結論】

 劣化ウラン弾の破片を体内に残している33人の湾岸戦争復員兵を追跡調査して「健康異常をきたした復員兵はひとりもいない」。「これは劣化ウランに関する最も信頼できる調査である」とアメリカ大使館は主張しています。

 実は、この調査は、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷報告集第8集で、私たちが紹介しているマック・ダイアミッド氏らの調査報告と人数や状況が似ており、同じ調査と思われます。同じ調査なのに、私たちは、これを劣化ウランの毒性を示す証拠とし、米政府は健康障害なしの証拠としているのです。たいへんな自信です。

 1993−4年以後、湾岸戦争で劣化ウラン弾に被曝した33人の復員兵が、バルチモア復員局医療センターの監視下に置かれました。彼らのうち劣化ウランを体内に残しているのは半数です。

 97年に調査され2000年に発表された報告では、33人のうちの29人を調査しています。その結果、尿中劣化ウラン濃度が高くなるに従って、神経・認知テストが悪くなり、生殖系統のホルモン機能に異常を認めています。また、遺伝子障害や、精子数の異常も報告されています。また、04年に発表された論文でも、遺伝子障害を認めています。まさに、劣化ウランには健康障害ありとする報告なのです。

 しかし、この研究では、上述の健康障害を認めている反面、劣化ウランに被曝していない湾岸戦争復員兵21人と比較すると、症状の訴えが多くないとしているのです。これが米大使館の「健康障害なし」とする根拠と思われます。ところが、比較したのは被曝していない21人中11人が神経に問題のあるというとても健康状態の悪い人たちでした。彼らと比較して、劣化ウランに被曝した人たちの健康状態は悪くないとしているわけです。これはたいへんへたななごまかしです。

調査結果薄める

 99年に調査し01年に発表された報告では、先の33人中の21人に、尿中劣化ウラン濃度が桁違いに低い29人が追加されています。その結果、前回の調査では統計的に明らかな差があった神経・認知テストや生殖系統のホルモン異常は、差がなくなっています。意図的に症状が出にくい人を調査に組み込み、結果を薄めたとしか思えません。こちらはなかなか手が込んでいます。

 また、これらの報告には、放射線障害で出現する重要な遺伝子障害の検査結果が報告されていません。これらはこの種の研究では常識的な検査なので、健康障害の事実が隠されている可能性があります。

 実は、彼女の論文に疑問を持ったので、劣化ウラン研究の権威ドラコビッチ氏が来日した際に質問したところ、「彼女は何もわかっていない」と厳しく批判されていました。しかし、そんな彼女らの報告でさえよく読めば、データ自体は劣化ウランの障害性を認めてしまっていることは前述した通りです。

 以上より、大使館の主張はとても「科学的証拠に基づいて証明」したものとは言えません。もし、引用している調査が、まったく別の研究なら、ぜひその中身を教えていただきたいものです。

(医療問題研究会 林 敬次)

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