2004年04月02日発行833号

【占領支配支える日本のODA 血税5500億を企業のために】

 小泉内閣は、「イラク復興支援」の名の下に自衛隊を派遣し、50億ドル(約5500億円)にのぼるODA(政府開発援助)を支出することを決めている。だが日本のODAは、決して被供与国の民衆のためでなく、日本企業の利益のため、そして占領支配の目的を貫徹するために使われる。イラクへの最初のODAがパトカーの供与であったことは、そのことを端的に示している。

警察にパトカー供与

 政府は無償供与の第一弾として、パトカーをイラク全土27都市の警察に提供することを決めた。無償供与にあてられる資金は約31億円で、これは小泉内閣がイラク復興支援会議(昨年10月)で2004年に無償で資金供与すると約束した15億ドル(約1650億円)の一部だ。パトカーは住友商事と三菱商事が落札し、前者がトヨタ製のランドクルーザー、後者が三菱自動車製のギャランを合わせて1150台納入するという。

 占領下での警察の主な役目は、民衆のレジスタンスや抗議行動を規制し、鎮圧することにある。パトカーはまさに治安維持のための機材で、米英による占領支配を支えるものだ。パトカーの提供は、日本の"国益"を前面に出した新ODA大綱による"戦略援助"そのものだ。

 そもそも、米英軍が国際法に違反して破壊したイラクの国土や施設の"復興"や占領支配のために国民の血税を投入すること自体が異常だ。いったい政府が約束した15億ドルとはどれほどの額なのか。

 この額は、2001年度二国間ODAのどの国に対するものよりも多い。1位のインドネシア(1045億)、2位の中国(834億円)と比べると、イラクへの無償援助の額の大きさがわかるだろう。

 EU(欧州連合)はじめ、各国政府が大義なき占領のための資金拠出を拒む中で、日本が占領を財政的に支えようとしているのだ。

 日本政府は3月26日、「イラク復興信託基金」に495億円を拠出し、2国間直接援助として218億円を追加支出することを決めた。

 その2国間援助では、(1)イラク全土に移動式変電設備27台を提供(2)80年代に日本がODAで建設した病院への医療機材供与(3)バグダッドへのプレハブ式浄水設備の供与(4)バグダッドやサマワに消防車を提供などをおこなうとされている。

 無償援助は借款と違い、利子で儲けることはできない。その代わり、ヒモ付きで実施されるので、自国企業のための市場開拓に活用できる。パトカーの無償援助は、その点でも典型的だ。

イラクにむらがる資本

 小泉内閣は2005年以降、35億ドル(約3850億円)の円借款を供与することを公約している。こうした二国間融資を先導する役割を果たすのが、世界銀行とIMF(国際通貨基金)の融資だ。前者は30〜50億ドル、後者は25〜42・5億ドルの融資を行うことを表明している。

 これら国際機関は融資の条件として、緊縮財政・民営化・公務員の削減・賃金抑制・社会保障の切り下げなど、いわゆる"構造調整"策を押しつける役割を果たす。

 イラクの場合は、フセイン政権下で主な産業が国有化されていたことから、石油・電力など基幹産業の民営化が実行されることになる。それは、今でも深刻化している雇用環境をいっそう悪化させる。その上でなされる二国間融資は、イラクを多額の利払いでがんじがらめにする。

 イラクをグローバル資本の草刈り場とし、その石油資源を略奪しようというのが、もともとイラク戦争と占領支配の狙いだ。

 "人道復興支援"の美名にだまされるわけにはいかない。不法な占領を終わらせることこそ、イラクの民主的再建への大前提だ。

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