2004年04月09日発行834号

【タイもニュージーランドも撤退表明 イラク戦争同盟は解体へ イラク占領支持で突出する日本政府】

 イラク戦争と占領のほころびがますます広がり、米英占領軍のパートナーである連合軍各国政府は、民衆からの撤退要求を無視できなくなってきている。ひとり突出して占領支持発言を繰り返す戦争屋・小泉に「自衛隊即時撤退・占領終結」を突きつけよう。

暴かれた開戦のウソ

 パウエル米国務長官は4月2日、フセイン政権が「移動生物兵器実験室」を保有しているという情報が間違いだった可能性があることを公式に認めた。米ロサンゼルスタイムズは、ネオコンと関係の深い亡命イラク人チャラビ(現イラク統治評議会メンバー)側近の兄弟が提供したものであり、この提供者は亡命前に横領事件で解雇されていたことなどから情報の信憑性は低下していると報じた。

ブレアのウソを追及する英国民衆(3月20日・写真提供 在英国 樺 浩志さん
写真:

 同情報は、昨年2月、国連安保理でパウエルがイラストを交えて得意げに「証拠」として提示したもの。イラストには、大型トレーラーに乗せられた「実験室」が描かれていた。CIA(米中央情報局)のテネット長官自ら「確定的な証拠として扱わない方がよい」とチェイニー副大統領に進言していたこともすでに明らかになっている。

 ブッシュ政権はこのような出所も怪しいでたらめ情報を「確たるもの」として扱い、連合国を戦争へと導いたのだ。

 イラク開戦をめぐっては、3月に連合軍の主要国であるポーランドの大統領が「大量破壊兵器があると惑わされたことに、もちろん不快感を感じている」と語ったばかりだ。

 まさに戦争屋ブッシュのうそで、数万のイラク民衆・兵士が殺され、今も殺され続けているのだ。

揺らぐ有志連合

 大義なき戦争に加わり占領を続ける有志連合=戦争同盟も、イラク民衆の抵抗闘争の激化の前に解体し始めている。タイとニュージーランドの撤退表明は、それを象徴するものだ。

 タイ国防省スポークスマンは4月3日、タイ軍撤退の前倒しを検討していることを明らかにした。タイ軍は、イラク中部のカルバラに443人の部隊を展開している。9月までの派遣予定となっているが、6月末のCPA(米英暫定占領当局)からの「主権移譲」後に撤退するというものだ。

 4月2日には、ニュージーランドのクラーク首相が9月に同国の施設部隊61人を撤退させるとともに、再度の派遣はしないと言明。総選挙を控えたオーストラリアでは、野党・労働党のレイサム党首が「クリスマスまでに850人の兵士を撤退させる」と公約した。

 また、韓国は国軍3600人の派兵先予定地をイラク北部の2都市に絞った。「武装勢力掃討は派遣の主目的から外れる」として、米国の「テロ掃討支援」要請を拒否。派兵予定兵士のうち173名が拒否するという事態も起き、派遣先の変更と派遣時期の延期を検討していた。

 連合軍諸国が米英の占領政策から離反しつつあるのだ。

 これらの動きへの決定的な引き金となったのが、3月14日のスペイン総選挙だ。

 昨年3月16日、大西洋の小島でアスナール・スペイン首相は、ブッシュ・ブレアとともにイラク開戦を決定した。その一年後、大多数の国民の反対を押し切って開戦したアスナール率いる与党が、イラク占領軍からの撤退を公約した野党・社会労働党に敗北した。「戦争の枢軸」の一角が崩れたのだ。

 スペイン総選挙2日後の16日、中米ホンジュラスのマドゥーロ大統領は「6月末を期限とすることで国会の承認を得た。派兵の延長は求めない」と語った。ニカラグアはすでに撤退した。米国の影響力が強い中米でさえ、米国の占領に対する離反が連続している。

 米英に次ぐ2500人の部隊を派遣しているポーランドでも、戦争を進め社会保障を切り捨てる政権への批判に耐え切れず、3月16日、首相が辞任を表明した。

 戦争の首謀者たちは、暴かれる「開戦理由のウソ」とイラク民衆の反占領闘争と結んだ世界の民衆の撤退要求の前に耐え切れなくなっている。

軍事と利権に群がる

 そんな中で、占領支持を表明し続ける戦争屋・小泉政権の突出ぶりは異常だ。

写真:二位のサウジアラビア10万ドルを大きく上回る50万ドルを拠出する日本政府。

 イラク戦争開始を手放しで支持した小泉は、過半数の反対世論を押し切り、陸海空の自衛隊をイラクに派兵した。

 3月27日には、戦地イラクに550人の陸上自衛隊部隊の展開を完了した。これに先立つ3月18日、航空自衛隊は「安全確保支援業務」として、占領軍の物資輸送をC130で実施。占領軍の一員として公然と兵站をになった。

 スペインの「占領軍撤退」の報にも、小泉首相・福田官房長官は口をそろえて「事情が違う」と「テロとの戦い」を繰り返し、果ては「国民にはテロと戦う覚悟ができている」(3/19 小泉)と、イラク占領に国民ぐるみで協力することを求める始末だ。

 軍事面だけではない。

 復興利権とイラクの資源を狙った争奪戦への参画も急ピッチで進めている。

 「イラク復興」を名目に、ODA(政府開発援助)50億ドル(約5500億円)の拠出を決定し、日本の大企業がうごめきだした。

 すでに、住友商事と三菱商事は、イラク民衆の抵抗闘争を抑圧するための警察車両の納入を落札。三菱商事を通じて警察車両を納入する三菱自動車工業は、イラクでの自動車販売に乗り出すことを決めている。また、三菱重工は火力発電所の復旧を8億5000万円で請け負い、住友商事はクレーン車などをイラク建設省から受注した。

 小泉の異常突出は、これらグローバル資本への「イラク復興権益」提供のためなのだ。

 スペインはじめ、あいつぐ撤退表明で、各国が占領に及び腰になっている今、小泉政権は占領の中核に台頭しようとしている。

 4月10〜13日、チェイニー米副大統領が来日する。「イラク復興」事業で大もうけしている米・KBR社の親会社であるハリバートンの元取締役だ。チェイニーは、自衛隊派遣に感謝を述べるという。そして、復興利権の分配が協議されるだろう。

 チェイニーを抗議で迎え、占領終結、すべての占領軍・自衛隊即時撤退の声で包囲しよう。

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